Daddy Screw & Donavon Steele/Big Tings (MadHouse Ruddims)
ジャマイカのダンスホールDJ、ダディ・スクリューとプロデューサー兼アーティストのドナヴォン・スティールによるコラボレーション・アルバム『Big Tings (MadHouse Ruddims)』は、2024年5月13日にスティールビーツよりリリースされました。全9曲・30分41秒という構成を持つ本作は、ペッパーシード・リディム、ハートビート・リディム、アラブ・アタック・リディム、アップタウン・ダウンタウン・リディムなど、複数のリディムに乗せた楽曲を収録しており、ダンスホールの伝統的なリディム文化を現代的なサウンドで体現しています。
タイトルトラック「Big Tings a Gwaan」の楽曲クレジットにはデイヴ・ケリーの名前も見られ、90年代ジャマイカのダンスホールシーンで活躍した両アーティストの豊富な経験と人脈が、このアルバムに深みを与えています。
ジャンルと音楽性
ダンスホールとラガを核に据えたサウンドが本作の持ち味です。90年代ジャマイカのダンスホール黄金期を生き抜いてきたダディ・スクリューの野太くエネルギッシュなトースティングと、ドナヴォン・スティールのプロデュースによる現代的なリディムが融合し、懐かしさと新しさが共存する独自のサウンドを生み出しています。複数のリディムを使いながらも一枚のアルバムとしての統一感を保つ構成は、ジャマイカのダンスホール文化への深い理解と敬意の表れです。

Daddy Screw & Donavon Steele/Big Tings (MadHouse Ruddims)
おすすめのトラック
- Big Tings a Gwaan (Pepperseed Riddim)
アルバムの幕開けを飾る、タイトルトラックです。
140BPMという高速のペッパーシード・リディムに乗せて、ダディ・スクリューのエネルギッシュなトースティングが炸裂する3分23秒のオープナーです。「ビッグ・ティングス・ア・グワン(大きなことが起きている)」というタイトルが示す通り、このアルバムが何者かを最初の一音で力強く宣言します。 - Sexy Kerry (Heart Beat Riddim)
96BPMのハートビート・リディムに乗せた、官能的なグルーヴが際立つ一曲です。
スロウダウンしたリディムの上でダディ・スクリューのボーカルが余裕を持って踊るこのトラックは、アルバムの中でも特にダンスフロアのカップルを意識した甘いムードが漂います。タイトルトラックの高速グルーヴから一転、聴き手に心地よい緩急を与えるアルバム前半のハイライトです。 - Body of an Angel (Uptown Downtown Riddim)
アルバム最長の3分54秒を誇る、アップタウン・ダウンタウン・リディムに乗せた一曲です。
「天使の体」というタイトルが示す通り、賛美と恋愛への讃歌がダンスホールの文脈で展開するこのトラックは、ドナヴォン・スティールのプロデュースが最も細やかに機能した一曲です。アルバム後半の山場を形成する、聴き応えのある充実のトラックです。 - Careless Gyal
アルバムのクロージングを飾る、3分36秒の締めくくりにふさわしい一曲です。
「不注意な女の子」というタイトルが示すストリート感覚あふれる歌詞と、ダンスホールの躍動するリディムが絡み合うこのトラックは、30分の旅の大団円として完璧な役割を果たしています。ダディ・スクリューの経験値がそのまま音楽に昇華された、このアルバムの余韻として最高の一曲です。
アルバム総評
「ダンスホール・リワインド」のような伝説的なコンピレーションでブジュ・バントン、レディ・ソウ、テラー・ファビュラス、シャバ・ランクスらと肩を並べてきたダディ・スクリューが、ドナヴォン・スティールとのタッグで2024年に送り出した本作は、90年代ダンスホールの魂を現代に呼び戻した意欲作です。9つのリディムを渡り歩きながら30分でダンスホールの旅を完結させるコンパクトな構成は、ダンスホールというジャンルの持つ多様性と豊かさを改めて実感させてくれます。ダンスホールを愛するすべての人に届けたい、玄人好みの一枚です。
🎵Sexy Kerry (Heart Beat Riddim)


