Earth Tongue/Floating Being
ニュージーランド・ウェリントン出身のサイケロック・デュオ、Earth Tongueのデビューアルバム『Floating Being』は、2019年6月21日にブリストル拠点のインディペンデント・レーベル、ストレン・ボディ・レコードよりリリースされました。ギタリストのグッシー・ラーキンとドラマーのエズラ・サイモンズの二人からなる本バンドは、2016年のウェリントンでのギグ活動を経て、オーストラリアとヨーロッパのツアー中にアルバムを書き上げ、メルボルンの友人のガレージで古い8トラック・タスカム・リール・トゥ・リールにドラムを録音するというアナログ録音にこだわりました。全9曲・30分6秒という構成を持つ本作は、ライブで演奏し続けてきた楽曲の生々しいエネルギーをそのまま封じ込めた一枚です。
ジャンルと音楽性
サイケロックを核に据えながら、初期70年代のサイケとプログロックから影響を受けたサウンドが持ち味です。Earth Tongueは演奏と録音の不完全さをむしろ積極的に受け入れており、磨き上げられたオーバープロデュースのレコードとは正反対を目指しています。メロディックとジャリングの間を行き来しながら、予想外のねじれと展開がリスナーを方向感覚を失わせつつも満足感のある霞の中へと引き込みます。グッシー・ラーキンのファズに塗れたリフの才能と、エズラ・サイモンズのオフキルターなドラミングが生み出す化学反応は、ブラック・サバスとホークウィンドへの敬意を感じさせながらも、完全に現代的な独自の世界観を確立しています。

Earth Tongue/Floating Being
おすすめのトラック
- Microscopic God
アルバムの幕開けを飾る、Earth Tongueの本質を一音で伝えるオープナーです。
ミュージックビデオも制作された本曲は、グッシー・ラーキンの「複雑な音楽をシンプルに聴こえさせ、プログロックをプリミティブに聴こえさせる」才能が最も発揮されたトラックのひとつです。ファズに塗れたリフが頭の中でぐるぐると回り続ける中毒性は、このバンドがなぜライブで観客を恍惚状態に陥れてきたかを物語っています。 - The Well of Pristine Order
ミュージックビデオも制作された、アルバム最大のスタンドアウト・トラックです。
「井戸は未知の現象を含むと言われている/存在しない人間の形を含むと言われている/肉体の放棄/浮遊する骨格/ゆっくりと振動する/幻想、侵入…」という歌詞は、まるでサイエンスフィクション・ファンタジー小説の一章のようです。2分42秒という短さの中に、このバンドの宇宙的な世界観が凝縮されています。 - Hidden Entrance
アルバム中盤に位置する、サイケデリアとプログの最も有機的な融合が実現した一曲です。
「隠された入口」というタイトルが示す通り、リスナーをEarth Tongueのサウンドの奥深くへと誘い込む迷宮的な構成が際立っています。ファズギターとドラムの対話が生み出す緊張感と解放感のサイクルは、このアルバムを通じて最も心地よい迷子感を味わわせてくれる一曲です。 - Sentient Sediment
アルバムの幕を閉じる、9曲の旅の完璧な締めくくりです。
「感覚を持つ堆積物」というタイトルが示す地層的・有機的なイメージが音楽にそのまま表れており、ゆっくりと積み重なる音の地層がアルバム全体の余韻を静かに、しかし確実に着地させます。このバンドが「音楽は時に奇妙で言葉では表せないべきだ」という信念を最も純粋に体現した、忘れがたいクロージング・ナンバーです。
アルバム総評
「ツーピースのサイケバンドがプログのトロープとダイナミクスを取り入れると知っていたら、バカにしていただろう――でも私はこのアルバムを心から愛している」というラウダー・ザン・ウォーのレビューが示す通り、Earth Tongueは先入観を覆すバンドです。ブラック・サバスとホークウィンドが老齢を迎えた今、Earth Tongueがそのジャンルに新たな命を吹き込み、新鮮でエキサイティングにしているという評価は、30分6秒のこのデビュー作を聴けば即座に納得できます。ディスコグスで平均評価4.5以上という高評価とともに、2024年にはオレンジ・スプラッター・ヴァイナルで再発されるほどの支持を誇る傑作です。
🎵The Well of Pristine Order



