2004年~2015年にかけてバンドとしての浮き沈みを経験したThe Libertinesが、9年ぶりに本格的な新作『All Quiet on the Eastern Esplanade』をリリースしました。Margateの自前スタジオ「Albion Rooms」をベースに録音された本作は、混沌とした過去を乗り越え、成熟したバンドの再生を示す作品。クラシックなインディー・ロックの魅力を保ちながらも、メンバー4人全員が執筆に関わった多彩な楽曲構成によって、“今のLibertines”の深みと絆が表れています。
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ジャンルと音楽性
本作のサウンドは、ガレージロック/インディーロックを軸に、ラテン風味、ジャズ、レゲエ、ミドルテンポの叙情性など、幅広い要素が取り込まれています。プロデューサーはディミトリ・ティコヴォイ、レコーディングはMargateとジャマイカで行われ、各メンバーの生活拠点が離れている今だからこそ生まれた“統一された瞬間”が音に刻まれています。演奏の荒々しさはそのままに、メロディラインやアレンジが今まで以上に洗練され、成熟した姿勢も窺える音像です。
おすすめのトラック
- 「Run Run Run」
アルバム冒頭を飾るパンク・アンセム。タイトルどおり“逃げ続ける過去”からの決別を宣言するようなエネルギーに満ちた曲。サビのキャッチーさが強烈で、衝動的な一歩を踏み出す姿が描かれています。 - 「Mustangs」
ミッドテンポのグラム/ガレージ色の強いナンバー。日常からの逃避と幻想をサイコな筆致で描写。ペースの違う音像と曲構造が、リリシズムと毒気の混合を演出しています。 - 「Night of the Hunter」
映画『ナイト・オブ・ザ・ハンター』やバレエ音楽を連想させる荘厳な構成。ダークでドラマチックな展開は、The Libertinesの作曲アプローチとして最も完成度の高い一曲です。 - 「Baron’s Claw」
ジャズ風アレンジとアコースティックな響きの異色作。トランペットやトーンの不協和音を巧みに使い、不穏で味わい深い曲に仕上げています。バンドの側面の芸術性が光るナンバーです。 - 「Oh Shit」
荒々しさとキャッチーなメロディが融合した一曲。タイトル通りの突発的で衝動的なエネルギーが、軽快なギターリフと勢いあるリズムに乗って一気に駆け抜ける。再結成後の成熟感もありつつ、初期の混沌とした熱量を思い出させるナンバーです。
アルバム総評
『All Quiet on the Eastern Esplanade』は、荒々しいパンク魂と成熟したセンスが共存する、The Libertinesの新たな音楽的到達点です。バンドの内部対立やドラッグ問題が沈静化し、クリエイティブな友情と対話が作品に反映されています。音楽性は多様でありながらも一貫性があり、過去と決別しつつ未来を見据える姿勢が伝わる内容です。確かに、初期の混沌さには及ばないとの声もあるものの、バンド史上で最も完成度の高い作品の一つと言えるでしょう。