アリゾナ出身のロックバンド、The Maineが2023年にリリースしたセルフタイトルアルバム『The Maine』は、彼らのキャリアを総括しつつ、さらに次のフェーズへの扉を開くような意欲作だ。バンド結成から15年以上、ジャンルを横断しながら進化を続けてきた彼らが、本作ではより洗練されたポップロックの魅力と誠実なメッセージ性を両立させている。エモ、オルタナティブ、ポップパンク、インディーポップ――そのすべてを経てなお、今のThe Maineが最もThe Maineらしい音を鳴らしている。
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Amazon.co.jp: The Maine (deluxe) [Explicit] : The Maine: デジタルミュージック
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ジャンルと音楽性
『The Maine』は、オルタナティブロック、エモ・ポップ、ポップパンクの要素をベースにしつつ、より広い層に届く洗練されたサウンドへと昇華されている。クリーンでダイナミックなギターサウンド、抑制と爆発を使い分けるドラムワーク、そして何よりもJohn O’Callaghanの感情のこもったボーカルが印象的。前作『XOXO: From Love and Anxiety in Real Time』に引き続き、感情の起伏や内省的なテーマを扱いながらも、希望や繋がりを大切にする歌詞が光る。
おすすめのトラック
- 「blame」
アルバムのリードシングル。切なさとキャッチーさが同居するメロディと、自己責任をテーマにしたリアルな歌詞が胸に刺さる。The Maineらしい感情表現が凝縮された一曲。 - 「how to exit a room」
穏やかなイントロからじわじわと広がる、シネマティックなバラード。失われた関係や感情の終わりを静かに見つめるような、余韻たっぷりのナンバー。Johnの低めの歌声が特に映える。 - 「dose no. 2」
ギターがリードする、ややダンサブルなビートが特徴的なトラック。軽やかさの中に憂いを感じさせるアレンジが新鮮。アルバム内でも音楽的な遊び心が感じられる1曲だ。 - 「thoughts i have while lying in bed」
夜の独り言のような歌詞と、シンプルながら感傷的なメロディ。誰もが経験したことのある孤独や不安を、The Maineらしい包容力で表現している。聴く者の心にそっと寄り添う一曲。 - 「leave in five」
ラストを飾るこの曲は、希望と前進の気持ちを込めた締めくくりにふさわしいナンバー。繊細なサウンドスケープと、にじみ出る温かさがじんわりと感情を満たしてくれる。
アルバム総評
The Maineの『The Maine』は、自己肯定や内省、対話といった普遍的なテーマを、バンドの成長と共に見事に描き出した一枚だ。ジャンルに囚われず、リスナーとの「共鳴」を重視したそのアプローチは、ベテランとしての風格と、未だに成長を続ける瑞々しさを両立させている。派手さはないが、一曲一曲が確かな説得力を持ち、何度も繰り返し聴きたくなる。長年のファンにも、これからThe Maineを知る人にもおすすめできる、真摯で優しいロックアルバムだ。