DJ Hankによる『Hank at 214 Mulberry (DJ Mix)』は、ファッションブランドAimé Leon Doreの旗艦店である「214 Mulberry」で行われたDJセッションを収録したミックステープです。このミックスは、2024年にリリースされ、ソウルフルなハウスミュージックを中心に、ファンクやイタロディスコといったルーツミュージックを織り交ぜた、レトロでありながらモダンなダンスグルーヴを約1時間にわたり展開しています。単なるダンスミックスに留まらず、ニューヨークの洗練された日常のBGMとしても機能するような、高い音楽性と心地よいヴァイブス（雰囲気）を持つ作品であり、DJ Hankの幅広い音楽知識と卓越した選曲センスが光っています。
ジャンルと音楽性
本作は主にソウルフル・ハウス、ディープハウスを基調としつつ、ファンクとイタロディスコの要素を絶妙にブレンドした音楽性が特徴です。
- ソウルとルーツの探求: 往年のソウルフルなボーカルサンプルやジャズの要素を多く含んだトラックを選曲しており、ハウスミュージックが持つルーツへの深い敬意を感じさせます。単なるテック系ハウスとは一線を画す、温かみのあるサウンドが中心です。
- 心地よいグルーヴ: 全体を通してBPMはミッドテンポからやや速めですが、アグレッシブさよりもスムースさとグルーヴ感を重視しています。シームレスなミックス技術により、リスナーを自然とダンスフロアへと誘うような一貫した流れを作り出しています。
- 多層的なブレンド: Mr. Gのような現行のハウスから、Bas Noirのようなクラシックなトラックまで、時代やスタイルを巧みに横断しており、一聴して飽きさせない多様性があります。
おすすめのトラック
このDJミックスはノンストップで繋がっているため、ここではその流れを象徴する4つのトラックとその役割を解説します。
- Soulsearcher「Can’t Get Enough (Mixed)」
ミックスのオープニングを飾る、クラシックなソウルフル・ハウスの代表曲。高揚感のあるピアノとボーカルが、このミックスが持つポジティブで温かいムードを一気に確立します。リスナーを心地よく音楽の世界に引き込む、完璧な導入トラックです。 - Mr. G「Got That Swing (Mixed)」
ミックスの中盤でグルーヴを深めるトラック。Mr. Gらしい、硬質なドラムと反復するファンキーなベースラインが特徴的で、よりディープでパーカッシブなハウスへと移行する橋渡しを担っています。ここから徐々にダンスフロアの熱気が高まります。 - Bas Noir「My Love Is Magic (Club Mix) [Mixed]」
80年代後半のシカゴハウスのクラシック。イタロディスコ的なシンセのフレーズと、強烈なボーカルサンプルが印象的で、ミックスにレトロでエモーショナルな色彩を与えています。ハウスの歴史を感じさせる、DJ Hankのルーツへのこだわりが垣間見える選曲です。 - Kem「Love Calls (Darryl James Remix) [Mixed]」
終盤に配置された、よりスムースでメロディアスなR&B/ソウルに接近した楽曲のリミックス。熱狂的なダンスフロアから、クールダウンしつつも余韻を残すような展開を作り出します。ボーカルの優しさが、心地よい感動をもたらします。
アルバム総評
『Hank at 214 Mulberry (DJ Mix)』は、DJミックスというフォーマットを通して、良質なダンスミュージックの過去、現在、そして未来を提示した作品です。Hankは、トラックとトラックの間で生まれるグルーヴを最大限に活かし、リスナーを飽きさせないドラマチックな展開を生み出しています。洗練されたファッションやカルチャーの発信地である「214 Mulberry」の雰囲気にふさわしい、エレガントでありながら身体が自然と動き出すような、極めて質の高いハウスミュージック・ミックスです。クラブミュージックファンはもちろん、心地よいBGMを探している人にも自信を持っておすすめできます。
