1983年に発表された『On the Rise』は、アトランタ出身のファンク・グループ、The S.O.S. Band(エス・オー・エス・バンド)にとって、まさに「上昇(On the Rise)」を決定づけた4枚目のアルバムです。本作の最大の特徴は、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった制作チーム、ジミー・ジャム&テリー・ルイスをプロデューサーに迎えたことにあります。彼らの革新的なサウンド・プロダクションと、メアリー・デイヴィスの艶やかなボーカルが化学反応を起こし、それまでのディスコ・ファンクから、より洗練された「ミネアポリス・サウンド」へと進化を遂げた記念碑的作品です。
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ジャンルと音楽性
本作のジャンルは、80年代初頭のポスト・ディスコ、エレクトロ・ファンク、そしてコンテンポラリーR&Bに位置づけられます。最大の特徴は、Roland TR-808といったドラムマシンの重低音と、空間を埋め尽くすようなシンセサイザーのレイヤーです。ジャム&ルイスが得意とする「タメ」の効いたスロウ~ミディアム・ファンクのグルーヴは、従来のバンド・サウンドに無機質なクールさと都会的な叙情性を加えました。これにより、ダンスフロアを揺らす力強さと、夜のドライブに最適なメロウさを完璧に両立させています。
おすすめのトラック
- 「Just Be Good To Me」 ジャム&ルイス制作による、本作を象徴する歴史的名曲です。TR-808の乾いたビートと執拗に繰り返される重厚なベースラインが、メアリー・デイヴィスのクールなボーカルを引き立て、聴く者をトランス状態へと誘います。
- 「Tell Me If You Still Care」 80年代R&Bを代表するスロウ・ジャムの傑作です。切ないメロディと、繊細なシンセの音色が絡み合い、愛の確認を求める歌詞が胸に迫ります。当時のクワイエット・ストーム・ムーブメントにも大きな影響を与えました。
- 「For Your Love」 軽快なカッティングギターとシンセが弾ける、高揚感に満ちたアップテンポ・ナンバーです。バンド本来のファンキーな勢いと、洗練された都会的なポップ・センスが見事に融合しており、アルバムのポジティブな側面を象徴しています。
- 「On the Rise」 アルバムのタイトル・トラックであり、インストゥルメンタルに近い構成でバンドの演奏力の高さを示しています。徐々に熱量を帯びていくグルーヴは、まさに「上昇」していくようなエネルギーに満ちており、アルバムのテーマを体現しています。
アルバム総評
『On the Rise』は、単なるヒット曲の寄せ集めではなく、80年代R&Bの質感を根本から変えてしまった「サウンドのデザイン」としての価値を持つアルバムです。ジャム&ルイスという天才的な才能を、The S.O.S. Bandという確かな実力を持つ器に注ぎ込んだ結果、今聴いても全く古びないモダンなブラック・ミュージックが誕生しました。このアルバムで確立された「重いビートと美しいメロディの融合」は、後のジャネット・ジャクソンのブレイクや、90年代のR&Bシーンにまで多大な影響を及ぼしています。時代を超えて愛されるべき、アーバン・ファンクの至宝といえるでしょう。



