1981年にリリースされたOrchestral Manoeuvres in the Dark(OMD)の3rdアルバム『Architecture & Morality』は、シンセポップというジャンルの枠を越え、芸術的実験性とポップ・センスを両立させた、彼らの代表作とも言える名盤だ。教会音楽のような神聖さと、冷ややかな電子音が絶妙に混ざり合い、80年代のニュー・ウェイヴシーンにおいて異彩を放ったアルバムである。
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ジャンルと音楽性
本作の音楽性は、シンセポップ、ニュー・ウェイヴ、アンビエント、そしてアート・ロックといった要素を内包している。リリース当時としては斬新だった電子楽器の多用と、荘厳なコーラス、そして感情のこもったボーカルが、全体に独特な浮遊感とスピリチュアルな深みを与えている。タイトルにもなっている「建築と道徳」の概念が、音像にまで反映された、構築的かつ内省的なサウンドデザインが魅力だ。
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おすすめのトラック
- 「Souvenir」
アルバム最大のヒット曲。ドリーミーなシンセのレイヤーに乗るアンディ・マクラスキーの儚げなボーカルが印象的。過去を懐かしむようなメロディは、切なくも美しい。 - 「Joan of Arc」
ジャンヌ・ダルクを題材にしたこの曲は、歴史的人物の情熱と悲劇を静謐に描写する。ミニマルなアレンジの中に情熱が息づいており、OMDの叙情性が際立つ。 - 「Maid of Orleans」
“Joan of Arc”の続編にあたる楽曲。3拍子のワルツのリズムとパイプオルガン風の音色が、まるで中世の教会音楽のような荘厳さを生み出している。バンドの実験精神が最も現れた名トラック。 - 「Sealand」
アンビエント的な長尺トラックで、波の音のようなシンセサイザーと徐々に盛り上がる構成が美しい。まるで無人島に漂着したような孤独感と静けさを描く。 - 「She’s Leaving」
よりポップなアプローチの一曲だが、そこに漂う感傷と空虚さがアルバム全体のテーマに繋がっている。メロディアスながらどこか影のある響きが心に残る。
アルバム総評
『Architecture & Morality』は、80年代初頭のニュー・ウェイヴ/シンセポップの流れの中でも突出した作品であり、OMDの音楽的成熟を示す決定的な一枚だ。キャッチーでありながら実験的、神秘的でありながら現代的──この相反する要素のバランスが奇跡的に取れている。
また、アルバムを通して宗教性や歴史、個人の感情といった重厚なテーマが、サウンドと歌詞の両方で巧みに表現されており、聴くたびに新たな発見がある。『Architecture & Morality』は、ポップミュージックが芸術に成りうるという事実を強く証明した傑作であり、今なお色褪せないOMDの金字塔的作品である。