ドイツ発のサイコビリー巨人、Mad Sinの初期衝動がそのままパッケージングされた1988年作『Amphigory』は、アンダーグラウンドの火種として今も多くのファンに語り継がれる怪作だ。粗削りながらもエネルギッシュなパフォーマンス、パンクの攻撃性とロカビリーの弾むようなビートを融合させたスタイルは、サイコビリーというジャンルの自由さと混沌を象徴している。
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Amazon.co.jp: Amphigory : Mad Sin: デジタルミュージック
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ジャンルと音楽性
『Amphigory』は、いわば“サイコビリーがまだ何者でもなかった頃”の象徴的な作品だ。ネオロカビリーのグルーヴ感とパンクの爆発力を併せ持ち、加えてホラーやスリラーといったサブカルチャーの美学が散りばめられている。ギターはノイジーでスラップベースは跳ね回り、ドラムは荒っぽくも確信に満ちている。とにかく速く、騒がしく、情熱的。そのすべてがMad Sinというバンドのキャラクターそのものだ。
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おすすめのトラック
- 「Amphigory」
疾走感あふれるスラップベースと、粗削りでいて中毒性の高いメロディが炸裂する、初期Mad Sinらしい痛快なサイコビリー・ナンバー。パンキッシュなエネルギーと不気味なユーモアが絶妙に混ざり合い、バンドの原点とも言えるカオスな魅力が詰まっている。ライブでも映える破壊力満点の一曲。 - 「Eat Yourself (Survivor Type)」
スティーヴン・キングの同名短編からインスパイアされた狂気の一曲。ホラー映画さながらの不穏なイントロから、暴走するギターとスラップベースが繰り出す恐怖とユーモアの融合が印象的。 - 「Alien Bug」
不気味な宇宙的テーマを疾走感あふれるサイコビリー・サウンドに乗せた、Mad Sinらしいユーモアと狂気が同居する一曲。鋭利なギターと唸るスラップベースが混ざり合い、異形のエネルギーを放出。B級SF映画を思わせる歌詞と音の世界観がクセになる中毒系ナンバー。 - 「Body Snatchers」
サイコビリーらしいホラー・モチーフとユーモアの融合。映画的なサンプリングも入り、Mad Sinの多面的な表現力が楽しめる。
アルバム総評
『Amphigory』は、Mad Sinがまだ若さと衝動のかたまりだった頃の熱気をそのまま真空パックしたような一枚だ。スタジオ技術や完成度は今の作品には及ばないかもしれないが、それを補って余りある熱量とアイデア、そして“他人の目なんて知らん”というDIY精神が全編に宿っている。ジャンルの枠に収まらないパンクスピリットと、ホラー映画的ユーモアに満ちたこの作品は、サイコビリー入門者にも、マニアにもおすすめのアルバムだ。