Stitch Hopelessが率いる『Gone Bats』は、サイコビリーやパンク、キャバレー風の退廃美が絡み合う、ダークで騒がしくも心に残るアルバムだ。Stitch Hopeless & The Sea Legsの名前でも知られるプロジェクトだが、ここではより内省的で個人的なメロディとストーリーテリングが光る。まるで夜の裏路地にあるボロボロの酒場で、不良たちがグラスを交わしながら吐き出す人生の断片のような音楽世界が広がる。
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ジャンルと音楽性
ジャンル的には、アコースティック・パンク、サイコビリー、フォーク・パンク、キャバレー・ゴシックの要素を持つ本作は、Tom Waits的なグロウルと、Gogol BordelloやThe World/Inferno Friendship Societyを想起させるジプシーパンク的な熱狂を内包している。しかし、Stitch Hopelessの歌声はどこか飄々としており、明るさと哀しさの境界を彷徨うように進行する。
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おすすめのトラック
- 「Gone Bats」
タイトル曲にして、アルバムのテーマを象徴するトラック。スウィング感あるビートとバンジョーの軽快な音色が響く中、狂気と皮肉が同居するStitchのボーカルが冴えわたる。まるで夜の墓地で開かれるダンスパーティーのような高揚感がある。 - 「Grey Laces」
荒々しくもエネルギッシュな仕上がりとなっています。スピード感あふれる反骨精神が感じられる一曲で、暗くもキャッチーな雰囲気が特徴です。 - 「Gonna Run」
疾走感あふれるパンクロック・ナンバー。荒ぶるギターと突き抜けるようなボーカルが、胸の奥にある焦燥感を代弁するかのよう。夜のドライブにもぴったりの一曲です。 - 「Trash Like Me」
クラシックなロックンロールのエネルギーを現代のパンクサウンドに昇華させています。 力強いギターリフとリズミカルなドラムが特徴で、聴く者を一気に引き込む魅力を持っています。バンドの荒々しくも情熱的な演奏が際立つ一曲で、ライブでも盛り上がること間違いなしです。
総評
『Gone Bats』は、単なるパンクアルバムではない。物語性、演劇性、そして“場末感”を音楽に昇華した、まるで一冊の酒場日記のような作品だ。耳に残るのはギターやホーンだけではない。漂うユーモア、皮肉、哀愁、そして生きることの切実さ。バンドスタイルでの楽曲とは異なる、Stitch Hopeless個人の内面が濃密に投影されたこのアルバムは、聴き手の感情の深部をじんわりと揺さぶってくる。
退廃的なのにあたたかく、笑えるのに泣きたくなる。そんな不思議な感覚を抱かせる『Gone Bats』は、パンクの形式に収まらない自由な表現を求めるリスナーに、ぜひ手に取ってもらいたい。