アメリカ・カリフォルニア発のサイコビリー・バンド、Hellbillys(ヘルビリーズ)が放つ『Torture Garden』は、そのタイトルが示すとおり、退廃的で暴力的、そしてどこかブラックユーモアを帯びた“拷問の庭”のような作品です。バンドが築き上げてきたダーティで過激な音楽性が凝縮され、パンクとロカビリー、さらにはホラー映画的な美学が激しくぶつかり合うアルバムとなっています。
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ジャンルと音楽性
ジャンルはサイコビリーに分類されるものの、その枠に収まりきらない攻撃性が特徴です。ギターはギザギザとしたエッジを持ち、ウッドベースが唸りを上げ、ドラムは怒涛のスピードで突き進みます。そしてヴォーカルは、怒声にも似たシャウトと哀れみのない語り口が交差し、聴く者に容赦のないインパクトを与えます。
Hellbillysは1989年の結成以来、アンダーグラウンド・パンクシーンで長らく活動を続けており、『Torture Garden』はその中でも完成度の高い作品のひとつ。楽曲の短さや疾走感がパンク譲りでありながら、全体に漂う暴力性とユーモアのバランス感覚が非常にユニークです。
おすすめのトラック
- 「Bondage a Go Go」
荒々しいギターリフと挑発的なリリックが炸裂する、サイコビリーの真骨頂とも言えるトラック。破滅的な快楽とダークなユーモアが交錯する一曲で、バンドの過激な世界観が凝縮されたナンバーです。 - 「No Sympathy」
ひときわ冷酷でダークなエネルギーが際立つ一曲。スピード感あるビートに乗せて突き刺さるようなヴォーカルが響き、同情など不要と言わんばかりの反骨精神が炸裂するサイコビリー・アンセムです。 - 「First Probe to Uranus」
ブラックユーモアと破壊的エネルギーが炸裂する異色トラック。スラップベースとギターリフが暴走する中、宇宙をテーマにしたふざけた歌詞が痛快に突き刺さる、カオティックでクセになる一曲です。 - 「Demons」
Hellbillysの持つサイコビリーの暗黒美を凝縮した一曲。荒々しいギターとうなるようなベースラインが、不穏な雰囲気を一気に盛り上げる。内面の葛藤や狂気をテーマにした歌詞も相まって、ヘヴィでありながらクセになる中毒性を放っています。
アルバム総評
『Torture Garden』は、ホラーとスピードとユーモアの三位一体で織りなす異形のアルバム。サイコビリーというジャンルの持つ反社会的・反道徳的側面を正面から受け止めた、ある意味で“誠実な”作品です。Hellbillysの姿勢は一貫しており、そのブレなさが本作でも十二分に発揮されています。
暴力的な衝動と緻密な演奏の融合は、聴けば聴くほど中毒性を帯びてくるでしょう。パンク、ホラー、ロカビリーに興味がある人、そして“普通じゃ物足りない”音楽ファンにこそ聴いてほしい、毒のある傑作です。