1996年にリリースされたThe Cardigansのサードアルバム『First Band on the Moon』は、スウェーデンのバンドが国際的なブレイクを果たすきっかけとなった重要作。代表曲「Lovefool」が世界中でヒットし、バンドの存在は一気に広く知られるようになった。だがこのアルバムの魅力は、ただのラブソング集ではない。甘美なメロディの裏にひそむシニカルな視点と、ポップとロックの境界を曖昧にする実験性こそが、本作を今なお色褪せない作品にしている。
⬇️アマゾンミュージックで『First Band on the Moon』をチェック⬇️
Amazon MusicでカーディガンズのFirst Band On The Moon (Remastered)を再生する
Amazon MusicでカーディガンズのFirst Band On The Moon (Remastered) をチェック。Amazon.co.jpにてストリーミング、CD、またはダウンロードでお楽しみください。
ジャンルと音楽性
ジャンルとしては、インディーポップ/オルタナティブロックに分類されるが、60年代ソフトロックやジャズの要素も随所に織り交ぜられているのが特徴。Nina Perssonのウィスパーボイスは、柔らかく、しかしどこか気だるげで、全体に漂うメランコリックな雰囲気を強調する。ギターサウンドは時に軽快でありながら、リリックの皮肉や不穏な空気を支える陰影のあるアレンジも目立つ。ポップスのフォーマットを借りつつ、どこか異質なものを滲ませるこの音楽性が、The Cardigansの真骨頂だ。
リンク
おすすめのトラック
- 「Lovefool」
世界的に最も有名な楽曲。恋にすがるような詞とキャッチーなメロディが絶妙にマッチし、聴けばすぐに耳に残る。だが歌詞をよく読むと、ただの甘いラブソングではなく、依存と喪失の物語であることがわかる。そのギャップがこの曲の中毒性を生んでいる。 - 「Been It」
アルバム冒頭を飾るミッドテンポのナンバー。明るいメロディに隠れた“恋愛の終焉”というテーマが秀逸。ギターのリフとNinaの語り口調のような歌唱が印象的。 - 「Your New Cuckoo」
スウィングジャズ調の軽快なリズムに乗せた、キュートで少し毒のある楽曲。まるで60年代映画の挿入歌のような空気感があり、アルバムの中でも異彩を放つ一曲。 - 「Losers」
静かに始まり、徐々に熱を帯びていくアレンジが美しい。内省的な歌詞は、成功や愛から取り残された者たちへの共感がにじむ。アルバム中でもっとも叙情的な楽曲の一つ。 - 「Great Divide」
アルバムの締めくくりにふさわしい、ドラマティックな構成と余韻を残すトーン。ポップさを残しつつも、シリアスな空気で幕を引くこの曲は、本作の多面性を象徴している。
アルバム総評
『First Band on the Moon』は、ポップの仮面をかぶった北欧的な冷たさと知性が宿るアルバムだ。The Cardigansは「可愛いだけじゃない」と自ら証明するように、この作品で音楽的幅広さと感情の奥行きを見せつけている。90年代インディーポップの名盤として語られる理由がここにある。今聴いても、そのサウンドは瑞々しく、少しビターだ。