1983年にリリースされたDavid Bowieのアルバム『Let’s Dance』は、彼のキャリアの中でも商業的に最も成功した作品のひとつであり、同時にポップミュージックとアート性の絶妙なバランスを築いた意欲作でもある。新たなプロデューサー、ナイル・ロジャース(Chic)の参加により、Bowieはファンクやダンス・ミュージックの要素を大胆に取り入れ、自身の音楽性を再定義した。このアルバムは、単なるヒット作ではなく、80年代の音楽シーン全体に多大な影響を与えた文化的な分岐点とも言える。
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ジャンルと音楽性
『Let’s Dance』は、ロック、ポップ、ファンク、ニューウェーブといった複数のジャンルを融合し、洗練されたサウンドに昇華させている。プロデューサーであるナイル・ロジャースのファンキーなギターリフと、若き日のスティーヴィー・レイ・ヴォーンによるブルージーなギターが共存することで、ダンサブルでありながらも骨太なロックとしての力強さを備えている。音作りは非常にクリアでポップ志向ながら、Bowieの特有のメランコリックなヴォーカルと社会的テーマが、作品に深みを与えている。
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おすすめのトラック
- 「Let’s Dance」
アルバムのタイトル曲にして最大のヒットナンバー。ロジャースのタイトなギターとパーカッシブなビートが主導する中で、Bowieは「踊ること=自由と解放」というテーマを、力強くも優雅に歌い上げる。MVも印象的で、先住民文化へのメッセージも含まれており、単なるダンスチューンにとどまらない深みがある。 - 「Modern Love」
跳ねるようなリズムとゴスペル的なバックコーラスが印象的なこの曲は、Bowie流のラブソング。恋愛や信仰、社会との距離感を、軽快なサウンドに乗せて語るスタイルが新鮮。ライブでも定番曲として長く親しまれた。 - 「Cat People (Putting Out Fire)」
重厚でドラマティックなアレンジが印象的なこの楽曲は、映画『キャット・ピープル』の主題歌としても知られる。アートロックとゴシックな世界観が融合したような異色の一曲で、アルバムの中で最もダークな存在感を放っている。 - 「Without You」
軽やかなリズムと控えめな構成が心地よいバラード。感情を抑えながらも深く響くボウイのヴォーカルが、アルバムの中に柔らかいコントラストを与えている。 - 「China Girl」
オリジナルはIggy Popとの共作だが、本作での再録はよりポップでキャッチーな仕上がり。メロディは美しく、歌詞は一見ラブソングのようでいて、東洋に対する西洋のフェティシズムを批判するという強い皮肉が込められている。
アルバム総評
『Let’s Dance』は、David Bowieのキャリアにおける大きな転機であり、アート性と商業性を見事に融合させた歴史的傑作である。ロジャースとのコラボにより、Bowieは新たなファン層を獲得しながらも、音楽的な妥協をせず、自身の美学を貫いた。80年代のサウンドを決定づけた一枚として、今なお色あせることなく、多くのアーティストやリスナーに影響を与え続けている。