1987年にリリースされたR.E.M.の『Document』は、彼らのキャリアにおける重要な転機を象徴するアルバムです。インディーロックから主流への橋渡しを果たし、アメリカン・オルタナティブロックの地盤を固めたこの作品は、バンドの原点を感じさせつつ、メジャーな成功を予感させる完成度を誇っています。
プロデューサーにスコット・リットを迎えたことで音の輪郭がよりシャープになり、政治的かつ詩的なメッセージが内包されたリリックが際立っています。『Document』は、R.E.M.が単なるカレッジロックの代表から、時代の空気を切り裂くバンドへと進化したことを証明した一枚なのです。
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Amazon.co.jp: Document (R.E.M. No. 5) : R.E.M.: デジタルミュージック
ジャンルと音楽性
本作はオルタナティブロック/ポストパンク/フォークロックを基調にしながら、インダストリアル的な要素やブルース的なグルーヴも感じさせる多面的なアルバムです。マイケル・スタイプの個性的で少しスモーキーなボーカル、ピーター・バックのジャンキーなギターサウンド、マイク・ミルズの流れるようなベースラインが、社会的テーマと相まって独自の世界観を生み出しています。
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おすすめのトラック
- 「The One I Love」
R.E.M.最大のヒットのひとつ。シンプルなギターリフと「This one goes out to the one I love」というフレーズが印象的だが、その裏には愛と所有、無関心を含んだアイロニカルなメッセージが込められている。ポップに聞こえて実は深い1曲。 - 「It’s the End of the World as We Know It (And I Feel Fine)」
リリックは早口で情報過多なカオスだが、それこそがこの曲の魅力。80年代アメリカの情報洪水と終末的ムードを見事にポップミュージックに落とし込んだ、R.E.M.らしさ全開の名曲。 - 「Finest Worksong」
アルバムのオープニングを飾るこの曲は、政治的な抗議と自己表現をテーマにした力強いアンセム。ドライビングなギターとスタイプの説得力あるボーカルが響く。 - 「Welcome to the Occupation」
アメリカの中南米政策への批判を織り込んだリリックと、緊張感あるサウンドが融合した楽曲。フォークロックの伝統と現代的なメッセージの見事なブレンド。 - 「Exhuming McCarthy」
マッカーシズムを皮肉った1曲で、ボーカルのリズムやサンプル使いが新しい感覚をもたらす。R.E.M.の社会批評的視点が最も色濃く出たナンバー。
アルバム総評
『Document』は、R.E.M.の過渡期を象徴する作品であり、彼らの音楽性の成熟と政治意識の深化を感じさせる力作です。パンクの精神とフォークの誠実さ、そしてポップの親しみやすさを絶妙にブレンドし、商業的にも芸術的にも高く評価されたこのアルバムは、彼らを90年代のオルタナティブ・アイコンへと導く礎となりました。
名曲揃いでありながら、ただのヒットアルバムにとどまらず、「声をあげること」の意味を静かに、そして力強く教えてくれる一枚。今なお色あせないメッセージとサウンドが詰まった不朽の名盤です。