Kings Of Leon『Can We Please Have Fun』
テネシー州ナッシュビル出身のフォロウィル兄弟と従兄弟によるロック・バンド、キングス・オブ・レオン。前作から約3年ぶりに届けられた『Can We Please Have Fun』は、通算9作目にして、彼らが「本来の楽しさ」を取り戻したことを告げる野心作です。メジャー・レーベルを離れ、新たにキャピトル・レコードと契約して制作された本作は、プロデューサーにハリー・スタイルズなどを手掛けるキッド・ハープーンを起用。初期の荒々しさと近年の洗練が見事に融合した、瑞々しい生命力に溢れる1枚となっています。
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ジャンルと音楽性
ジャンルとしては、彼らのルーツであるサザン・ロック(南部ロック)を基盤に、ポストパンクやガレージロックのリバイバル的な要素を強く打ち出しています。これまでのスタジアム・アンセム的な壮大さを保ちつつも、よりオーガニックで遊び心のあるアンサンブルが特徴です。カレブ・フォロウィルの唯一無二のしゃがれたヴォーカルは、時に優しく、時に爆発するように響き、バンド全体がリラックスした状態でセッションを楽しんでいるような、文字通りの「Fun(楽しさ)」が音の端々から伝わってきます。
おすすめのトラック
- 「Mustang」 アルバムの先行シングルであり、本作の勢いを象徴する一曲。中毒性の高いギターリフとドライブ感のあるリズムが特徴で、カレブの叫ぶようなヴォーカルが初期の彼らを彷彿とさせます。
- 「Split Screen」 アルバムの中で最も内省的でメロウな瞬間を捉えた楽曲。繊細なシンセの音色と、空間を活かしたギターのレイヤーが美しく、バンドの音楽的な成熟度と深みを感じさせてくれます。
- 「Nowhere to Run」 80年代のポストパンク的な軽快さと、モダンなポップ・センスが融合したアップテンポなナンバー。思わず身体が揺れるようなベースラインが心地よく、今の彼らの自由なムードが凝縮されています。
- 「Ballerina Radio」 アルバムのオープニングを飾る、浮遊感のあるギターと力強いドラムが印象的なトラック。徐々にビルドアップしていく構成が、新たな物語の始まりを予感させるドラマチックな一曲です。
- 「Rainbow Ball」 サイケデリックなエッセンスと、力強いグルーヴが同居する実験的な楽曲。これまでの彼らの枠組みを飛び越えようとする意志が感じられ、アルバムタイトル通りの遊び心が炸裂しています。
アルバム総評
『Can We Please Have Fun』は、ベテランの域に達したキングス・オブ・レオンが、自身の遺産に甘んじることなく、純粋に「音楽を作る喜び」に立ち返った作品です。過度な装飾を削ぎ落とし、4人の絆から生まれるダイナミズムを最優先した音作りは、聴く者に清々しい感動を与えます。長年のファンには初期の衝動を感じさせ、新しいリスナーにはタイムレスなロックの格好良さを提示する。これこそ、2020年代におけるロック・アルバムの理想的な姿だと言えるでしょう。



