Mick Ronsonのセカンド・ソロアルバム『Play Don’t Worry』(1975年)は、彼がデヴィッド・ボウイの“Spiders from Mars”期に築いた名声を背景に、独自のアーティスト像を探求した一枚です。ボウイの片腕ギタリストとしての印象が強い彼ですが、本作ではプロデューサー、アレンジャー、そしてシンガーとしての多面的な才能を披露。ロックの王道を押さえつつも、ソウルやポップス、さらには実験的な感覚も取り込んだ、深みのあるサウンドが展開されています。派手さよりも曲の強度と独自のアレンジに重きを置いた、ミュージシャンズ・ミュージシャンらしい作品です。
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ジャンルと音楽性
『Play Don’t Worry』は、70年代中期のブリティッシュ・ロックを基盤にしつつ、ソウルフルなリズムやストリングスを交えたアレンジ、そしてグラマラスなギター・サウンドが特徴です。Ronson自身がアレンジを手がけていることもあり、ギターの厚みとオーケストレーションの調和が見事。ロックに留まらず、ポップスやソウル、ファンクの要素を交差させ、シンガーソングライター的な繊細さも併せ持っています。ボウイの影響を残しつつも、より自身の色を打ち出したアルバムと言えるでしょう。
おすすめのトラック
- 「Billy Porter」
アルバムの冒頭を飾る軽快なロックチューン。キャッチーなメロディと勢いのあるギターが、Ronsonのプレイヤーとしての魅力を端的に表しています。華やかでポップな側面が強調され、アルバムの扉を明るく開きます。 - 「Angel No. 9」
ソウルフルなカバーで、ホーンやリズムのグルーヴ感が光る楽曲。Ronsonのボーカルは決して派手ではないものの、誠実で熱のこもった歌唱が曲にリアリティを与えています。アレンジ力の高さも随所に感じられる一曲です。 - 「Stone Love」
ハードロック的なギターリフとドラマチックな展開が印象的。Ronsonのギターサウンドが存分に堪能できるだけでなく、70年代ロックらしいスケール感があり、アルバムのハイライトの一つに数えられます。 - 「Girl Can’t Help It」
ロカビリーのクラシックを独自に解釈したカバー曲です。原曲の50年代的な軽快さを残しつつ、ロンスンらしいグラム・ロック的な艶やかさと重厚なギターサウンドが加わり、シンプルなロックンロールが現代的に再生されています。 - 「Play Don’t Worry」
タイトル曲であり、アルバムのテーマを象徴する楽曲。軽快なリズムと開放感のあるメロディが、Ronsonの前向きなメッセージ性を表現しています。ギターの煌めきがポップに響く、聴きやすさも魅力です。
アルバム総評
『Play Don’t Worry』は、Mick Ronsonが単なる「ボウイの相棒」ではなく、一人のミュージシャンとして多彩な表現力を持っていたことを証明するアルバムです。派手なロックスター的存在感よりも、堅実で職人的なセンスを前に出し、アレンジャーやプレイヤーとしての力量を強調しています。ロック、ポップ、ソウルを横断しながらも、全体には統一感があり、70年代ブリティッシュ・ロックの良質な一面を映し出しています。商業的には過小評価されがちですが、Ronsonのファンや音楽的背景を探るうえで欠かせない一枚であり、その誠実で実直なサウンドは、時代を超えてリスナーの心を捉える力を持っています。