イギリス・ロンドン出身のインディーロックバンド、The Maccabeesが2012年にリリースしたサードアルバム『Given to the Wild』は、バンドのキャリアにおいて最も重要かつ決定的な作品となりました。前作までの性急なポストパンク・リバイバル的なスタイルから脱却し、広大で深遠な音響空間を構築。本作で彼らは初めて全英アルバムチャートで1位を獲得し、その音楽的な成熟度と芸術性が高く評価されました。タイトルの通り、「野生に捧げられた」ような、本能的かつ壮大なサウンドスケープが展開されています。
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Amazon.co.jp: Given To The Wild : ザ・マッカビーズ: デジタルミュージック
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ジャンルと音楽性
本作の核となるのはインディーロックですが、そのサウンドはスタジアム・ロックの荘厳さ、ドリームポップの霧がかったテクスチャ、そしてアンビエント的な広がりを兼ね備えています。バンド自身が「シネマティック・ロック」と表現したように、楽曲全体を通して映画的な情景が目に浮かぶのが特徴です。
- 空間的なギターワーク: 深いリバーブとディレイが特徴的なギターサウンドは、空気感を演出し、楽曲に奥行きを与えています。
- 複雑なレイヤー: 緻密に重ねられたサウンドの層が、楽曲を豊かで感情的なものにしています。
- 感情を揺さぶるメロディ: リードボーカルのオーランド・ウィークスによる抑制されながらも感情のこもった歌唱と、強烈なフックを持つメロディが、リスナーの心に深く響きます。
おすすめのトラック
アルバムの魅力を象徴する、必聴のトラックを5曲ご紹介します。
- 「Given to the Wild (Intro) / Child」 イントロトラックからシームレスに繋がる「Child」は、アルバム全体のムードを決定づける重要な楽曲です。神秘的な雰囲気と、徐々に高まるエネルギーがリスナーをこの音響世界へと引き込みます。
- 「Feel to Follow」 アルバムを象徴する壮大なオープニングトラックの一つで、そのスケールの大きさが印象的です。深いリバーブと多層的なサウンドプロダクションが特徴で、聴く者をすぐにアルバムの世界観へと誘い込みます。
- 「Pelican」 このアルバムから生まれた最大のアンセムです。疾走感のあるドラムと力強いベースライン、そして感動的なコーラスが一体となり、スタジアムを揺らすような高揚感を生み出しています。The Maccabeesの代表曲の一つです。
- 「Ayla」 パーカッシブなリズムと反復的なギターリフが、どこか原始的でトリバルなグルーヴを生み出しているトラックです。曲が進行するにつれてレイヤーが積み重なり、壮大なクライマックスを迎えます。ライブでの人気も非常に高い楽曲です。
- 「Go」 比較的アップテンポなナンバーであり、バンドが初期に持っていたエネルギッシュな要素を、より洗練された形で表現しています。内なる衝動や逃避を歌った歌詞と、躍動的なサウンドが融合した一曲です。
アルバム総評
『Given to the Wild』は、The Maccabeesがインディーバンドから、真に野心的な「アーティスト」へと変貌を遂げたことを証明する傑作です。彼らはこの作品で、感情的な深さと音楽的な壮大さという二つの要素を見事に両立させました。アルバムは一貫したトーンで構成されており、最初から最後まで一つの物語、あるいは長い映画を観ているかのような没入感を提供します。
このアルバムは、深い感情移入を伴う音楽体験を求めるすべてのリスナーにとって、必携の作品です。


