1990年代後半から現代に至るまで、サイコビリー・シーンの最前線を走り続けるカリフォルニア出身のバンド、Tiger Army(タイガー・アーミー)。彼らが2001年にドロップしたセカンド・アルバム『II: Power of Moonlite』は、単なるパンク・ロックやロカビリーの枠を超え、多くのリスナーの心に深い刻印を残した金字塔的な作品です。前作以上に洗練されたメロディと、夜の静寂を切り裂くような熱量が同居する本作は、リリースから20年以上が経過した今なお、色褪せない魅力を放っています。
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ジャンルと音楽性
本作の核となるジャンルは「サイコビリー」ですが、その音楽性は非常に多層的です。50年代の古き良きロカビリーへのリスペクトを基盤にしつつ、80年代のパンク・ロックのスピード感、そしてゴシック・ロックに通じるダークで耽美な世界観が見事に融合しています。
フロントマンであるニック・13のボーカルは、激しいシャウトよりも、甘く切ないメロディを歌い上げることに長けており、それがバンド独自の「哀愁のサイコビリー」を決定づけました。激しく打ち鳴らされるウッドベースのスラップ音と、クリーンかつ鋭いギターリフが織りなすサウンドは、夜、月明かり、孤独といったキーワードを強く想起させます。
おすすめのトラック
このアルバムの魅力を象徴する5曲をピックアップしました。
- 「Incorporeal」 疾走感あふれるビートと、ニック・13の伸びやかなボーカルが印象的なオープニング・ナンバーです。幽霊や精神性をテーマにした歌詞が、アルバム全体のミステリアスなトーンを決定づけています。
- 「Power of Moonlite」 タイトル曲であり、ライブでも欠かせない代表曲です。キャッチーなサビと、力強いコーラス・ワークが特徴で、夜のハイウェイを飛ばすような高揚感を持っています。
- 「Cupid’s Victim」 サイコビリーという枠を飛び越え、多くのパンク・ファンに愛される名曲です。失恋の痛みを歌った切ないメロディは、一度聴いたら忘れられないほどの中毒性があります。
- 「Under Saturn’s Shadow」 バンドのルーツであるパンク・ロックの要素が強く出た、アグレッシブな一曲です。短く、激しく、しかしどこかロマンティックな響きを失わない構成が秀逸です。
- 「Annabel Lee」 エドガー・アラン・ポーの詩をモチーフにした、アルバムを締めくくる壮大なナンバーです。哀愁漂うアコースティックな響きから始まり、ドラマチックに展開していく構成は圧巻のひと言です。
アルバム総評
『II: Power of Moonlite』は、Tiger Armyというバンドのアイデンティティが完成した瞬間の記録です。激しさと美しさ、パンクの衝動とロカビリーの伝統、そのすべてが「月明かり」というテーマの下で完璧なバランスを保っています。ジャンルのファンのみならず、メロディを重視するすべてのロック・リスナーに聴いてほしい、2000年代を代表する傑作の一つと言えるでしょう。



