Isotope/Deep End
1970年代中盤、イギリスのプログレッシブ・ロックやカンタベリー・シーン、そしてジャズ・ロック界隈が異常なまでの盛り上がりを見せる中、圧倒的な超絶技巧を武器に異彩を放ったのが、天才ギタリストのゲイリー・ボイル(Gary Boyle)率いるアイソトープ(Isotope)です。 彼らが1976年に発表した3枚目にしてラスト・アルバムとなった『Deep End』は、カンタベリー・ロックの名門ソフト・マシーン(Soft Machine)の元メンバーであるヒュー・ホッパー(ベース)が脱退した後に制作された作品。新加入のフランク・ロバーツ(キーボード)やゾハール・フレスコらの強力なリズムセクションを迎え、よりファンキーかつシンフォニックに、そして極限までソリッドに研ぎ澄まされたインストゥルメンタル・ジャズ・ロックの最高峰にして、彼らの最高傑作です。
ジャンルと音楽性
本作の音楽ジャンルは、「ジャズ・ロック(Jazz Rock)」「フュージョン(Fusion)」、そして「カンタベリー・ロック(Canterbury Rock)」に位置づけられます。 最大の特徴は、ゲイリー・ボイルが放つハイスピードかつ正確無比なギター・ワークと、それを迎え撃つ複雑に構成されたリズム・アンセムの融合です。前作までのダークなカンタベリー色の強いアプローチから一歩進み、ジェフ・ベック(Jeff Beck)やマハヴィシュヌ・オーケストラ(Mahavishnu Orchestra)にも肉薄する、爽快でファンキー、かつ都会的なクロスオーバー・サウンドへと進化を遂げました。各楽器がスリリングに激突するインタープレイの応酬は、テクニカル系ロックファンの魂を激しく揺さぶります。

Isotope/Deep End
おすすめのトラック
- 「Mr. M’s Picture」アルバムのオープニングを飾る、疾走感抜群の超高密度ジャズ・ロック・ナンバーです。変拍子を巧みに取り入れたタイトなドラムの上で、ゲイリー・ボイルの鋭く歪んだテクニカルなギターリフと、きらびやかなキーボードがスリリングに交差します。アルバム全体のクオリティの高さを一瞬で確信させる、極めてエネルギッシュなキラーチューンです。
- 「Deep End」アルバムのタイトル曲であり、緩急のついた構成美が光るインストゥルメンタル大作です。静謐でミステリアスなイントロから、じわじわとテンションが高まっていくビルドアップが見事。サビにあたる展開でのダイナミックなギターソロは、まさに「深淵(Deep End)」へ引き込まれるかのようなドラマチックな余韻を残します。
- 「Crunch Cake」ファンキーなベースラインと弾むようなリズムが非常に心地よい、ファンク・フュージョン直系のナンバーです。ゲイリーのギターカッティングのセンスと、エフェクトを巧みに駆使したソロ・プレイが堪能できます。難解なテクニックを随所に散りばめながらも、徹底してノリやすくダンサブルに仕上げられた、バンドの抜群のセンスが光る一曲です。
- 「Attila」アルバム後半のハイライトを飾る、怒涛のインタープレイが炸裂する高速チューンです。ドラム、ベース、キーボード、およびギターが、まるで互いの限界に挑み合うかのような壮絶なジャム・セッションを展開します。圧倒的なスピード感とスリルは、すべての楽器演奏者やテクニカル・ロック愛好家にとって鳥肌モノの完成度を誇ります。
アルバム総評
『Deep End』は、1970年代のクロスオーバー/ジャズ・ロック・ムーブメントの熱気と知性を完璧に凝縮した、まさに職人技の結晶です。 ゲイリー・ボイルという類稀なるギタリストの才能が、バンドメンバーとの熱い化学反応によって120%引き出されており、最初から最後まで息をもつかせぬ緊張感と高揚感が持続します。
テクニカルで難解なプログレ的要素を持ちながらも、キャッチーでファンキー、かつグルーヴが全編を貫いているため、非常に聴きやすいのも本作の大きな魅力です。ブランドX(Brand X)やリターン・トゥ・フォーエヴァー(Return to Forever)が好きなリスナーはもちろん、スリリングなギター・インストゥルメンタル作品を愛するすべての人にとって、これは一生モノのコレクションとして手元に置いておくべき究極のマスターピースです。
🎵Crunch Cake


