杏里の『Heaven Beach』は、1983年にリリースされた彼女の代表的なアルバムのひとつであり、シティポップの成熟期を象徴する作品だ。デビュー当初から持ち味であった爽やかで透明感のある歌声に加え、都会的で洗練されたアレンジが施されており、夏の海辺や夜の街を思わせる情景が音楽を通して広がっていく。本作は「シティポップ=大人のための都会的サウンド」というイメージを強く打ち出し、杏里が80年代の音楽シーンで確固たる地位を築くきっかけとなった重要なアルバムでもある。
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ジャンルと音楽性
『Heaven Beach』は、シティポップを基盤に、AORやフュージョン、ディスコ的要素を取り入れた洗練された音楽性が特徴だ。軽快なリズムとキーボードを中心としたアレンジ、そして時折差し込まれるサックスやギターのフレーズが都会的なムードを際立たせている。杏里の柔らかく透明感のある歌声は、都会的なクールさと夏の解放感を同時に表現しており、聴く者をリゾート感覚へと誘う。特に海辺や夜景を想起させるサウンドスケープは、アルバム全体を通して統一感をもたらし、まさに「夏の都市型リゾート・アルバム」と呼ぶにふさわしい内容になっている。
おすすめのトラック
- 「二番目のaffair」
冒頭を飾るこの曲は、角松敏生による作詞・作曲で、都会的で洗練されたサマー・シティポップの代表格。イントロのギターとトランペットが夏の気配を一気に呼び込み、切ない恋心を描いた歌詞が、爽やかなアレンジによって軽やかに響きます。 - 「Heaven Beach」
アルバムタイトル曲にふさわしく、爽やかで軽快なリズムが印象的。まるで南国のビーチで風を受けながらドライブしているような解放感に包まれる楽曲だ。 - 「風の中でloving you」
透明感ある歌声と爽やかなメロディが際立つシティポップの名曲です。軽やかなアレンジとロマンティックな歌詞が溶け合い、夏の風景や恋のときめきを思わせる仕上がり。都会的でありながらも甘く切ない雰囲気が漂い、杏里の魅力を端的に示す一曲となっています。 - 「Fly By Day」
軽快なリズムと透明感ある歌声が織りなす爽やかなシティポップ・ナンバーです。柔らかなメロディと心地よいアレンジが、朝の風や新しい一日の始まりを感じさせるような開放感を演出。リゾート感覚と都会的な洗練さが同居する、杏里らしい魅力が凝縮された一曲です。
アルバム総評
『Heaven Beach』は、杏里がシティポップの中心的存在へと成長していく過程を示す重要なアルバムであり、同時に80年代日本の音楽シーンを語るうえで欠かせない名盤だ。都会的でありながらも夏のリゾートを思わせる軽快なムードを持ち、聴く者に「大人のサマー・バケーション」の情景を思い描かせる。代表曲「悲しみがとまらない」や「Cat’s Eye」によって広く知られる一方で、アルバム全体にわたる統一感と完成度は非常に高く、シティポップブームを再び迎えている今だからこそ再評価すべき作品である。