2017年にリリースされた原田知世のアルバム『音楽と私』は、彼女のキャリアの集大成とも言える作品だ。1980年代から映画や音楽で独自の存在感を放ち続けてきた原田が、デビュー当時の瑞々しさを残しながらも、成熟した大人の表現力を備えて再構築したセルフカバー集である。過去の名曲が新たな解釈とサウンドで蘇り、懐かしさと新鮮さが同居するこのアルバムは、世代を超えて多くのリスナーに響く内容となっている。
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Amazon.co.jp: 音楽と私 : 原田知世: デジタルミュージック
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ジャンルと音楽性
『音楽と私』は、シティポップやニュー・ミュージックをベースにしつつ、2010年代らしいモダンなアレンジを施した作品だ。アコースティックで柔らかいサウンドから、ジャジーで洗練された雰囲気まで、多彩な楽曲群が並ぶ。彼女の声は若い頃の透明感を保ちながら、より深みと落ち着きを増しており、シンプルな伴奏との相性も抜群。全体を通して、時間をかけて熟成されたワインのような芳醇さを感じさせる。
おすすめのトラック
- 「時をかける少女」
彼女を象徴する代表曲を、穏やかなテンポと柔らかいアレンジでセルフカバー。往年のフレッシュさに加え、人生経験を重ねた歌声が、過ぎ去った青春をやさしく抱きしめるように響く。 - 「地下鉄のザジ (Zazie dans le métro)」
原田の繊細で透明感ある歌声が都会の孤独感を美しく描く。軽やかなリズムとシンプルなサウンドが、楽曲に新しい風を吹き込んでいる。 - 「ロマンス」
彼女の柔らかな歌声が大人の落ち着きをまといながらも、透明感を失わずに響きわたる仕上がりとなっている。80年代の瑞々しいポップ感覚をそのまま抱えつつ、2017年ならではの洗練されたアレンジによって、甘く切ない恋の情景をより深く味わえる魅力的なカバーだ。 - 「天国にいちばん近い島」
映画と共に語られる名曲。2017年版ではより落ち着いたアレンジで、郷愁を誘うメロディと彼女の包み込むような歌声が心に残る。 - 「くちなしの丘」
穏やかで柔らかなアレンジの中に、彼女の透明感ある声が静かに溶け込む一曲。懐かしさを帯びながらも、成熟した表現力が加わり、過ぎ去った季節の風景を優しく呼び起こすように響く。青春の記憶と大人の余韻が同居する、味わい深いセルフカバーとなっている。
アルバム総評
原田知世の『音楽と私』(2017年)は、単なるセルフカバー集ではなく、彼女自身が歩んできた時間を音楽で振り返りながら、今の自分を提示する作品である。デビュー当時を知る世代にとっては懐かしく、新しい世代にとってはシティポップ再評価の文脈の中で新鮮に響くだろう。透明感のある歌声に成熟した感情が宿り、聴く者を優しく包み込む――そんな一枚である。