アメリカ西海岸パンクの象徴的存在、U.S. Bombsが2001年に放ったアルバム『Back at the Laundromat』は、ストリートの埃と汗にまみれたリアルなロックンロールの息吹を感じさせる作品だ。90年代後半から2000年代初頭にかけてのパンク・リバイバルの波を真正面から受け止めながらも、彼ら独自の泥臭さと反骨精神が詰まっている。まるで一枚のジャケットからビールの匂いとガソリンの煙が立ち上るような、そんな“パンク・ロードムービー”のようなアルバムである。
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ジャンルと音楽性
U.S. Bombsは、オーセンティックな70’sパンクの精神を引き継ぎながら、アメリカのハードボイルドなストリート感覚をブレンドしてきたバンド。本作『Back at the Laundromat』も例外ではなく、RamonesやThe Clashのようなメロディックなフックと、Oi!パンク的な合唱コーラス、そしてロックンロールの荒削りなリズムが混在している。フロントマン、デュアン・ピーターズのしゃがれた声は、まるで人生の痛みを笑い飛ばすように響き、どの曲にも“生きることそのものがパンクだ”という確信が宿る。サウンドはシンプルながらも、一本芯の通ったリズムとギターリフがアルバム全体を貫いており、アンダーグラウンド・パンクの理想形を体現している。
おすすめのトラック
- 「Tora Tora Tora」
曲が始まると同時に、U.S. Bombsの代名詞であるハイエナジーで疾走感あふれるパンク・ロックが炸裂する。シンプルながらも鋭いリフと、デュアン・ピーターズの「唸るような」ヴォーカルが、アルバム全体のアティテュードを決定づける、完璧なオープニング・トラックだ。 - 「Die Alone」
このアルバムを代表するアンセムの一つとして特に評価の高い楽曲。メロディックでありながら、荒々しさを失わないそのバランス感覚は彼らならでは。孤独やニヒリズムといったテーマが、キャッチーなメロディに乗せて力強く歌い上げられている。 - 「Lunch in a Sack」
彼らが大きな影響を受けたザ・クラッシュ(The Clash)へのオマージュを強く感じさせるトラック。特に、そのリフやリズムの構成は、ジョー・ストラマーらのサウンドを彷彿とさせる。サビやコーラス部分では、デュアンが「CLASH!」と叫んでいるように聞こえる瞬間もあり、バンドのルーツとリスペクトが詰まったファン必聴のナンバーだ。 - 「Yer Country」
ストレートで痛快なパンク・ロックでありながら、彼ら特有の皮肉や社会への不満を吐き出す歌詞が特徴だ。「自分の国」や「盲目的な愛国心」に疑問を投げかけるような内容が、エネルギッシュな演奏に乗って響き渡る。シンプルな構成の中にバンドの反骨精神が凝縮された、メッセージ性の強いトラックだ。
アルバム総評
『Back at the Laundromat』は、華美な装飾や過剰なプロダクションを拒み、真っすぐなエネルギーと不器用な誠実さで突き進む一枚だ。デュアン・ピーターズの生き様とシンクロするようなサウンドは、どのトラックにも熱と埃がこびりついている。メロディアスでありながら荒々しく、ストリートのリアルを体現する。2000年代初頭のパンク・シーンにおいても、その不屈のスタイルは異彩を放っていた。U.S. Bombsにしか出せない「現場感」と「生き様のにじむロック」が詰まった、真の意味でのパンク・クラシックである。