1997年にリリースされたPennywiseの通算4作目のアルバム『Full Circle』は、彼らの原点に立ち返りながらも、より強固な信念と社会意識を持って作られた一枚です。本作は、ベーシストのJason Thirskの死という深い悲しみを乗り越えたバンドが、彼に捧げる作品として制作されたもので、タイトルの「Full Circle(円環)」には、再出発・再生の意味が込められています。
このアルバムは、怒り・哀しみ・希望といった感情が激しく交差しながら、Pennywiseらしい高速ビートと鋭利なギターリフが全編を駆け抜ける、ハードコアパンクの真髄が詰まった一作です。
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ジャンルと音楽性
ジャンルとしては、メロディック・ハードコア/パンク・ロックに分類される『Full Circle』。勢いのあるテンポ、政治的・社会的な歌詞、そしてコーラスワークの強さが特徴的で、Bad ReligionやNOFXの流れを汲みながらも、Pennywiseならではの誠実さと激情が前面に出ています。
ギターの音圧は増し、ヴォーカルのJim Lindbergもより感情をむき出しにし、Thirskへの追悼の意を強くにじませるなど、内面からくるエネルギーがサウンドに直結しています。
おすすめのトラック
- 「Fight Till You Die」
アルバムの幕開けを飾るナンバー。希望と怒りを共に叫ぶこの楽曲は、リスナーにとってのアンセムとなり得る一曲。自己の信念を貫けというメッセージが、直球で響きます。 - 「Society」
タイトなリズムと鋭いメッセージ性が融合した、まさにPennywiseの真骨頂。腐敗した社会への怒りとそれを変える意志が込められており、ライブでの定番曲でもあります。 - 「Broken」
悲しみを背負いながらも立ち上がろうとする心の葛藤を描いたミドルテンポの曲。歌詞においてもJason Thirskへの想いがにじみ、バンドの内面が垣間見える感動的な一曲。 - 「Go Away」
怒りと葛藤が渦巻く疾走感全開のメロディック・ハードコア。短くも鋭いリフと、感情を爆発させるヴォーカルが、心の中の「消え去ってほしいもの」へ真っ直ぐにナイフを突き立てる。パンクの本質を体現した1曲。 - 「Bro Hymn」
仲間への追悼と絆を讃える、涙と拳が同時に突き上がるアンセム。シンプルで力強いコーラスは、ライブでの大合唱を想定したかのような魂の叫び。パンクの熱さと哀しみが共存する、永遠の名曲です。
アルバム総評
『Full Circle』は、Pennywiseというバンドのアイデンティティを決定づけた重要作であり、単なるパンクアルバム以上の重みと熱量を持つ作品です。Jason Thirskの死というバンドにとって最大の悲劇を乗り越え、彼の意志を継ぎながら進化する姿が、そのまま音楽に刻み込まれています。
ただ叫ぶのではなく、痛みと向き合いながらも希望を見出そうとする彼らの姿勢は、当時のパンクシーンの中でも異彩を放っており、今なお色褪せないメッセージとして多くのファンに響き続けています。
ハードでありながら人間的、攻撃的でありながら誠実——『Full Circle』はそんなPennywiseの「魂」が詰まった一枚です。