Dan Hartman/I Can Dream About You
1980年代のポップ・シーンにおいて、シンガー、ソングライター、そしてプロデューサーとしてマルチな才能を発揮したダン・ハートマン(Dan Hartman)。彼が1984年にリリースしたアルバム『I Can Dream About You』は、同年の大ヒット映画『ストリート・オブ・ファイヤー』の劇中歌(劇中では架空のグループ「ザ・ソレルズ」が口パクで歌唱)としてシングル・カットされ、全米チャートを駆け上がった伝説のタイトル曲をフィーチャーした、彼のソロキャリアにおける最大の商業的成功作です。 きらびやかな時代性と、ブラック・ミュージックへの深いリスペクトが奇跡的にブレ合わさった本作は、今聴いても一瞬で心が躍り出す極上のキラー・チューンが満載の決定盤です。
ジャンルと音楽性
本作の音楽的ジャンルは、「ブルー・アイド・ソウル」「シンセ・ポップ」、そして「AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック)」に属します。 最大の特徴は、ソウルフルで伸びやかなダンのヴォーカルと、1980年代中盤ならではの最先端の電子音(シンセサイザーやドラムマシン)の華麗な融合です。モータウン・サウンド直系の軽快なグルーヴをベースにしつつ、非常にキャッチーなメロディと、煌びやかで都会的なアレンジを施すソングライティング能力はまさに職人技。単なるポップ・アルバムの枠に留まらず、ディスコ、ダンス・ミュージック、そして上質なロックが贅沢に溶け込んだ、80sアーバン・ポップスの最高峰と言えます。

Dan Hartman/I Can Dream About You
おすすめのトラック
- 「I Can Dream About You」 言わずと知れた80sポップスの金字塔です。弾むようなシンセ・ベースと切ないピアノのイントロが鳴り響いた瞬間、胸の高鳴りが止まりません。ブルー・アイド・ソウルの代名詞にふさわしいダンのエモーショナルな歌声と、完璧なコーラス・ワークが絡み合い、どこかノスタルジックで甘美な「夢の世界」へとリスナーを誘います。映画の熱気とともに時代を超えて愛され続ける、一分の隙もない不滅の名曲です。
- 「We Are the Young」 アルバムからのセカンド・シングルであり、当時のダンス・チャートを席巻したエネルギッシュなシンセ・ポップ・チューンです。若者たちの解放感やエネルギーを歌ったこの曲は、疾走感のあるドラムビートとパワフルなブラス・セクション風のシンセが特徴。聴き手を一瞬にして明るく前向きな気分にさせてくれる、まさに80年代の陽気な空気をそのまま形にしたような一曲です。
- 「Second Nature」 ダンの抜群のポップ・センスが光る、軽快でソウルフルなミドル・テンポのナンバーです。心地よいギターのカッティングと、どこかモータウンを思わせるクラシカルなソウル・フィーリングが現代的なアレンジと調和しています。じわじわと込み上げてくる優しいメロディ・ラインは、アルバムの中でも特に大人のリスナーに響く隠れた傑作です。
- 「Shy Hearts」 80年代特有のどこか哀愁を帯びたメロディと、ダイナミックなビートが融合したドラマチックなダンス・ナンバーです。シンセサイザーの冷たい質感と、ダンの熱いソウル・ヴォーカルのコントラストが非常にスリリング。静かなAメロから、感情が一気に爆発するキャッチーなサビへの展開など、ドラマのBGMとしても映えるようなスリリングな構成美を誇っています。
アルバム総評
『I Can Dream About You』は、1980年代という「音楽が最も華やかだった瞬間」を完璧なソングライティングで捉えた最高傑作です。ダン・ハートマンという天才が、時代の空気感を敏感に吸い上げつつ、彼自身のルーツであるソウルやR&Bを商業的なポップ・ミュージックとして完璧な形で昇華させています。
アルバムを通して捨て曲が一切なく、当時のきらめく夜のストリートや都会の夜景が目に浮かぶような、極めてビジュアルイメージの強い傑作です。 80sポップス、AOR、ブルー・アイド・ソウルの魅力をこれでもかと満喫できる本作は、現代のシティ・ポップやレトロ・ウェーヴが好きな若い世代のリスナーにとっても、必ず感動を届けてくれる一生モノのマスターピースです。
🎵I Can Dream About You


