Colonel Abrams『Colonel Abrams』
1985年にリリースされたカーネル・エイブラムス(Colonel Abrams)のセルフタイトル・デビューアルバムは、音楽史における大きな転換点を象徴する一枚です。ディスコのきらびやかな時代が終わりを告げ、シカゴやニューヨークで「ハウス」という新たな胎動が始まった時期、彼は誰よりも早くその本質を体現しました。重厚なシンセサイザーとむき出しのドラムマシン、そして何より彼自身の深いバリトン・ボイスが融合したサウンドは、フロアに熱狂をもたらし、ダンスチャートを独占しました。本作は、現代のあらゆるダンスミュージックのDNAに刻み込まれていると言っても過言ではない、真のマスターピースです。
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ジャンルと音楽性
本作のジャンルは、アーリー・ハウス(初期ハウス)からポスト・ディスコ、そして都会的なR&Bを横断する非常に独創的なものです。当時、最先端だったRoland TR-808/909などのリズムマシンによるミニマルで硬質なビートを採用しながら、その上を流れる旋律は極めてソウルフルで叙情的です。この「無機質なテクノロジー」と「有機的なボーカル」の対比こそが、後のディープ・ハウスやガレージ・ハウスへと繋がる重要な架け橋となりました。
おすすめのトラック
- 「Trapped」 彼の代名詞であり、ハウス・ミュージックの聖典とも呼べる一曲です。 不穏にループするシンセサイザーの旋律が焦燥感を煽り、自由を求める情熱的なボーカルが聴く者の胸を打ちます。
- 「I’m Not Gonna Let You」 多幸感と躍動感に満ち溢れた、ダンスフロア直系のキラーチューンです。 力強いキックと鮮やかなシンセ・ブラス、そしてカーネルの伸びやかな歌唱が、聴く者をポジティブなエネルギーで包み込みます。
- 「The Truth」 ニューヨークの夜の情景が浮かぶような、メロウで洗練されたミディアム・ナンバーです。 彼のボーカリストとしての実力が際立っており、クラブだけでなく、リビングでのリスニングにも耐えうる深い味わいがあります。
- 「Speculation」 エレクトロニックな質感が強調された、非常に先鋭的なダンストラックです。 力強いコーラスとパーカッシブなビートが重なり合い、当時のダンスシーンの熱気をそのまま封じ込めたような迫力があります。
- 「Over and Over」 中毒性のあるリフレインが心地よい、アルバムのクライマックスを飾る楽曲です。 シンプルながらも計算されたグルーヴは、まさに「Over and Over(何度も何度も)」繰り返して聴きたくなる魔力を持っています。
アルバム総評
『Colonel Abrams』というアルバムを聴くことは、ハウス・ミュージックという巨大な文化が産声を上げた瞬間に立ち会うことと同義です。カーネル・エイブラムスが提示した「ソウルフルなハウス」というスタイルは、その後数十年にわたり、数多のDJやプロデューサーたちの指針となりました。彼の声が持つ圧倒的な存在感は、電子音の中に人間らしい体温を吹き込み、ダンスフロアを祈りの場へと変える力を持っていました。リリースから長い年月を経た今でも、その輝きは全く色褪せることがありません。



