2009年にリリースされたNOFXのスタジオアルバム『Coaster』は、バンドにとって通算11作目となる作品であり、これまでの毒舌、皮肉、社会批評、そしてキャッチーなメロディーの全てが詰まった一枚だ。30年近いキャリアを誇る彼らが、年齢や時代に迎合せずに、むしろその”老い”すら笑い飛ばすような態度で創り上げたこのアルバムは、ファンにとっては安心感と、ある種の進化を同時に感じさせる。
⬇️アマゾンミュージックで『Coaster』をチェック⬇️
Amazon.co.jp: Coaster : NOFX: デジタルミュージック
Amazon.co.jp: Coaster : NOFX: デジタルミュージック
ジャンルと音楽性
NOFXは90年代のメロディック・パンクシーンを牽引してきたバンドであり、本作『Coaster』もその本質をしっかりと保っている。高速ビートに乗せたシンガロングできるメロディー、ベースラインが前に出たアレンジ、スカやハードコアの要素を織り交ぜた構成は健在だ。ただし、リリックの切れ味と構成力においては、過去作以上に洗練されており、ユーモアと風刺が絶妙なバランスで共存している。
リンク
おすすめのトラック
- 「We Called It America」
アルバムの幕開けを飾るこのトラックは、アメリカ社会への批判をストレートに叩きつけるNOFXらしい一曲。ブッシュ政権時代の混乱とアイロニーを描きつつ、パンクの王道リフで突っ走る。 - 「My Orphan Year」
本作でもっとも感情的な楽曲のひとつ。自身の両親を失った体験を歌にしたこのバラード調のナンバーは、普段のひねくれたNOFXとは違う一面を見せる感動作だ。 - 「Blasphemy (The Victimless Crime)」
宗教に対するNOFXの一貫した批判的立場を、鋭く、そして皮肉たっぷりに表現したナンバー。リズミカルな構成とキャッチーなサビが耳に残る。 - 「Best God in Show」
またしても宗教がテーマの楽曲だが、こちらはよりスカサウンドの要素を取り入れた軽快なサウンドが特徴的。信仰と人間性の関係を皮肉交じりに描写する手腕はさすが。 - 「I Am an Alcoholic」
自身のアルコール依存を軽妙なユーモアで描いた一曲。深刻なテーマながら、バウンス感あるビートとファット・マイクの語り口で、聴き手を笑わせながら考えさせる。
アルバム総評
『Coaster』は、NOFXが年齢を重ねながらも「老いない」理由を教えてくれるアルバムだ。政治、宗教、死、依存といったシリアスなテーマを扱いながら、それを笑いと音楽で包み込む彼らのスタンスは、ポップ・パンクやメロコアとは一線を画す独自の美学を感じさせる。軽快なサウンドと重厚なメッセージのギャップが生む味わい深さこそが、NOFXの真骨頂であり、『Coaster』はその魅力をあらためて証明した一枚だ。