1980年代初頭のネオロカビリー・ムーブメントを牽引したThe Rockatsが放つ『Make That Move』は、都会の夜を疾走するロカビリーの新時代を告げた傑作だ。クラシカルなロカビリーのスピリットをそのままに、パンクやニューウェーブのスピード感とスタイリッシュなアティチュードを融合。50年代への憧憬と80年代の革新が交差するこのアルバムは、単なる懐古ではなく、ロックンロールの進化形を提示した作品と言える。煌びやかで、野性的で、どこか切ない――The Rockatsが放つビートは、まるで夜明け前のダンスフロアに鳴り響く恋の衝動のようだ。
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ジャンルと音楽性
『Make That Move』は、ネオロカビリー(Neo-Rockabilly)の代表的作品として知られる。ギターの軽快なスラップ、ウッドベースの弾むリズム、そしてヴォーカルLeee Black Childersの艶のある声が絡み合い、全体に洗練されたクールさが漂う。Stray Catsのブームと時を同じくしながらも、The Rockatsはよりジャジーで都会的な音を志向しており、パンク的なラフさよりも、スウィング感とメロディの豊かさを重視しているのが特徴だ。
エコーの効いたギターリフやシャープなドラムサウンドは、当時のニューヨーク・クラブシーンにもマッチし、単なるロカビリーの復古ではなく、「現代に生きるロカビリー」をしっかりと提示している。
おすすめのトラック
- 「Make That Move」
アルバムのタイトル曲であり、ロカッツの代名詞的ナンバー。弾むリズムとキャッチーなコーラスが心地よく、都会の恋を軽やかに描く。スラップベースのグルーヴ感が最高に心地いい。 - 「Go Cat Wild」
初期ロカビリーの熱気をそのまま閉じ込めたナンバー。スピード感のあるギターリフと、疾走するビートが聴く者の身体を自然と動かす。まさに「野生に戻れ」と言わんばかりのエネルギーだ。 - 「Never So Clever」
彼らの持ち味であるクラシックなロカビリー・スピリットに、80年代特有の洗練とスピード感をブレンドした軽快なナンバー。ヴォーカルの軽やかなトーンが都会の夜を駆け抜けるようなムードを演出し、ダンスフロアにぴったりなエネルギーを放つ一曲だ。クラシックロカビリーへのオマージュとモダンなセンスの絶妙なバランスが光る。 - 「Woman’s Wise」
甘くも切ないロカビリーの香りが漂うミドルテンポの佳曲。軽快なギターとしなやかなリズムが心地よく、ヴォーカルの少し翳りを帯びたトーンが大人のロマンティシズムを感じさせる。
アルバム総評
『Make That Move』は、The Rockatsがロカビリーを「古い音楽」から「今鳴らすロック」へと再生させた記念碑的な作品だ。パンクの疾走感、ロックンロールの情熱、そしてスウィングするジャイブのリズム――それらが見事に融合し、80年代の空気を纏いながらも、時代を超えて輝きを放ち続けている。
現代のネオロカビリーやサイコビリーのルーツを辿るなら、この一枚は絶対に外せない。The Rockatsの『Make That Move』は、永遠に踊り続けるためのロックンロールの教典であり、“クラシックとクールの間で火花を散らす、ロカビリー・スピリットの結晶”だ。