Sleeperが2017年にリリースしたベスト・アルバム『Inbetweener: The Best of Sleeper』は、1990年代のブリットポップ・ムーヴメントを語る上で欠かせない彼らの全キャリアを網羅した作品です。1993年の結成から1998年の解散までに発表された3枚のスタジオ・アルバム、そして活動再開後の音源からも選曲されており、フロントウーマンであるルイーズ・ウェナーの知的でシニカルな世界観と、バンドのキャッチーなギター・ポップ・センスが一枚に凝縮されています。単なるヒット曲集ではなく、彼らの音楽性の多様な進化の軌跡をたどる、ファンにとっても入門者にとっても決定的なコレクションです。
⬇️アマゾンミュージックで『Inbetweener: The Best of Sleeper』をチェック⬇️
ジャンルと音楽性
Sleeperの音楽性は、ブリットポップを主軸としつつも、そのルーツにはThe Smithsのようなポストパンク・バンドの影響が色濃く見られます。特徴的なのは、ルイーズ・ウェナーによる知的なリリックと、冷徹なようでいて時折感情的になるボーカル・スタイルです。ポップ・ソングとしてのフックの強さと、オルタナティヴ・ロック的なギター・サウンドのエッジを高い次元で両立させています。特にウェナーの歌詞は、日常の中の皮肉や、ジェンダーの視点を含む内省的なテーマを扱い、当時のブリットポップ勢の中でもユニークな知的な側面を担っていました。
おすすめのトラック
- 「Inbetweener」
アルバムのタイトルにもなっている大ヒット曲。疾走感あふれるギター・リフと、ルイーズのクールなボーカルが完璧に調和した、ブリットポップのアンセムです。内気な若者の感情を描いた歌詞と、高揚感のあるメロディのコントラストが魅力的です。 - 「Sale of the Century」
より洗練されたポップ・センスが光るミディアム・テンポの楽曲。キャッチーなサビのメロディと、資本主義的な消費社会への皮肉を込めた歌詞が絡み合い、バンドの後期における円熟した表現力を示しています。 - 「Vegas」
デビューアルバム『Smart』収録曲。初期の衝動的なエネルギーが詰まった、荒々しいギター・ロック・チューンです。勢いのある演奏と、ストレートなメロディがSleeperの初期衝動を感じさせます。 - 「What Do I Do Now?」
映画『トレインスポッティング』のサウンドトラックにも収録された、ダークでグルーヴィなナンバー。サイケデリックな要素も含む、実験的なサウンドプロダクションが光り、バンドの持つ多面性を象徴しています。 - 「Atomic」
アメリカのバンドであるBlondieの1979年のクラシック曲をカバーしたもので、特に1996年公開の映画『トレインスポッティング』のサウンドトラックに収録されたことで知られています。原曲が持つディスコ・ロック的なムードを一新し、非常に高速かつアグレッシブなブリットポップ/パンク・アンセムへと変貌させています。
アルバム総評
『Inbetweener』は、Sleeperが短期間の活動の中でいかに多くの傑作を生み出したかを証明する名盤です。このコレクションは、Britpopというブームの中で、女性フロントマンの視点から独自のアイデンティティを確立したバンドの、知的でタフ、そしてとてつもなくキャッチーな魅力を再発見させてくれます。90年代UKロックのファンはもちろん、良質なギター・ポップを求める全ての音楽リスナーに自信を持って推薦できる決定的な一枚です。



