The Sonics『Here Are The Sonics』
1965年にリリースされたザ・ソニックスのデビュー・アルバム『Here Are The Sonics』は、ガレージ・ロックというジャンルを定義し、後のパンク・ロックやグランジに計り知れない影響を与えた一枚です。当時のメインストリームであったクリーンなサウンドを真っ向から否定するかのような、荒々しく過剰に歪んだレコーディング・スタイルは、まさに「早すぎたパンク」と呼ぶに相応しいものです。本作に収められた狂気的なエネルギーは、音楽史における一つの特異点として今もなお輝きを放っています。
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Amazon.co.jp: Here Are the Sonics : The Sonics: デジタルミュージック
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ジャンルと音楽性
本作のジャンルは「ガレージ・パンク」および「プロト・パンク」の極致です。50年代のロックンロールやR&Bをベースにしながらも、その出力は限界まで引き上げられています。最大の特徴は、ジェリー・ロズリーによる野獣のようなボーカルと、過剰なまでに歪んだギターとサックスのアンサンブルです。スタジオの機材をわざとオーバーロードさせて録音されたというエピソードが示す通り、そのサウンドは低解像度ながらも圧倒的な音圧と破壊力を誇ります。
おすすめのトラック
- 「The Witch」 バンドのデビュー・シングルであり、彼らのスタイルを決定づけた伝説的なナンバーです。不穏なギター・リフと地を較うようなリズム、そして「魔女」を警告する絶叫に近いボーカルが、当時のポップ・ソングとは一線を画す不気味さと熱量を生み出しています。
- 「Psycho」 タイトル通り、狂気に満ちた一曲です。シンプル極まりないリフの繰り返しが聴き手の興奮を煽り、中盤の荒れ狂うサックス・ソロがカオスを加速させます。後のガレージ・バンドたちがこぞって手本にした、まさに教科書のような楽曲です。
- 「Strychnine」 毒薬であるストリキニーネを「俺の飲み物」と言い放つ、過激でユーモアに溢れた歌詞が印象的な名曲です。ピアノの連打と歪んだギターが混ざり合い、聴いているだけで血管が沸騰するような高揚感を与えてくれます。
- 「Good Golly Miss Molly」 リトル・リチャードの名曲カバーですが、原曲の華やかさを暴力的なまでの音圧で塗り替えています。ジェリー・ロズリーのシャウトはもはや楽器の一部と化しており、ロックンロールのスタンダードがいかに過激なダンスミュージックになり得るかを証明しています。
アルバム総評
『Here Are The Sonics』は、単なる懐古的なロックンロール・アルバムではありません。ここにあるのは、楽器を掻き鳴らす喜びと、既存の枠組みを破壊しようとする本能的な衝動です。録音から60年近くが経とうとしている今、ハイレゾ音源や洗練されたプロダクションが当たり前となった現代において、このアルバムが放つ「ノイズ」は、むしろ新鮮でリアルなものとして響きます。ロックンロールが本来持っていたはずの「毒」と「衝動」を体感したいのであれば、これ以上の教科書は存在しません。



