The Stooges『Fun House』
1970年に発表されたザ・ストゥージズのセカンド・アルバム『Fun House』は、ロック史上最も過激で、最も「生」に近いエネルギーを封じ込めた作品の一つです。前作のガレージ・ロック的なアプローチをさらに深化させ、スタジオ・ライブ形式で録音された本作は、聴き手に逃げ場を与えないほどの圧倒的な音圧と緊張感に満ちています。後世のパンク、ポストパンク、オルタナティヴ・ロックに与えた影響は計り知れず、ロックが持つ破壊衝動を芸術の域まで高めた金字塔と言えるでしょう。
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ジャンルと音楽性
本作のジャンルは「プロト・パンク」と定義されることが多いですが、その実態はより複雑です。基本にあるのは野蛮なガレージ・ロックですが、そこにジェームス・ブラウンのような漆黒のファンクネスと、フリー・ジャズの即興性、そしてブルースのドロドロとした情念が混ざり合っています。特に後半にかけてサックスが狂暴に鳴り響く様は、まさにカオスそのものです。イギー・ポップの咆哮と、ロン・アシュトンの重厚なリフが一体となり、洗練とは無縁の「純粋な衝撃」を創り出しています。
おすすめのトラック
- 「Down on the Street」 アルバムの幕開けを飾る、重戦車のようなグルーヴが印象的なナンバーです。不穏なベースラインと粘りつくようなギターリフが、デトロイトの街の退廃的な空気感を完璧に表現しています。
- 「T.V. Eye」 イギーの凄まじい叫び声から始まる、アルバム屈指のハード・ロック・チューンです。「T.V. Eye(Twinkling Virgin Eye)」という独特のフレーズが繰り返され、原始的な欲望が爆発するような熱量に圧倒されます。
- 「Dirt」 一転して、スローで重苦しいブルース・フィーリングが漂う楽曲です。泥沼に沈み込んでいくようなサイケデリックな陶酔感があり、イギーの表現力の幅広さと、バンドの底知れない闇を感じさせます。
- 「1970 (I Feel Alright)」 アルバムを象徴する爆発的な一曲です。終盤にスティーヴ・マッケイのサックスが乱入し、ロックンロールがフリー・ジャズへと崩壊していく様は圧巻で、文字通り「最高(I Feel Alright)」なカタルシスを味わえます。
アルバム総評
『Fun House』は、音楽が「綺麗に整理される前」の、剥き出しの衝動をパッケージングすることに成功した稀有なアルバムです。ここには、高度なテクニックや洗練されたプロデュースといった概念は存在しません。あるのは、ただひたすらに熱く、狂おしいほどの生命力の肯定です。イギー・ポップという不世出のフロントマンと、奇跡的なバランスで結ばれたバンドメンバーが、一瞬の火花を散らして作り上げたこの「狂乱の家」は、時代を超えてあらゆる反逆児たちの聖典であり続けています。



