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ザ・フェイントの『Wet From Birth』は、 冷たい機械の皮膚の下で、衝動が熱狂する!2000年代ダンス・パンクの夜を支配した、シニカルでダンサブルなインダストリアル・エレクトロ・ロックの金字塔

alternative Rock/Alternative
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ネブラスカ州オマハ出身のエレクトロニック・ロック・バンド、The Faintが2004年にリリースした4thアルバム『Wet From Birth』は、彼らのディスコグラフィーの中でも特に、冷徹なインダストリアルな感触と、爆発的なダンス・フロア・エネルギーが最も高いレベルで融合した傑作です。前作『Danse Macabre』で築き上げたニュー・ウェイヴ・リバイバルとエレクトロクラッシュの潮流をさらに深化させ、よりダークで、より緻密なサウンドプロダクションによって、彼らの音楽の「暗黒面」と「陶酔感」を最大限に引き出しています。Keith Murrayの冷たいシンセサイザーのレイヤーと、Todd Finkの皮肉的でアジテーション(扇動)的なボーカルが、この作品全体に張り詰めた緊張感と、止められない衝動を与えています。彼らが提示した2000年代前半のダンス・パンクの決定的な美学が、ここに凝縮されていると言えるでしょう。

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Amazon.co.jp: Wet From Birth [Explicit] : The Faint: デジタルミュージック
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ジャンルと音楽性

The Faintの音楽性は、主に「エレクトロクラッシュ」「ダンス・パンク」、そして「インダストリアル・ロック」の要素を深く包含しています。本作『Wet From Birth』では、特にインダストリアルなテクスチャが強化されています。冷たく、機械的なドラムマシン(多くはライブドラムと重ねられる)、荒々しく歪んだベースライン、そして何層にも重ねられたノイジーで鋭利なシンセサイザーの音が特徴的です。楽曲の構成はポスト・パンク譲りの反復性を持ちながらも、そのリズムは完全にダンス・ミュージックのそれであり、聴く者を問答無用でフロアへと誘う強烈なグルーヴを持っています。社会やテクノロジーへの皮肉を込めたシニカルな歌詞は、この暗くもダンサブルな世界観を完成させる重要な要素となっています。

おすすめのトラック

  • 「I Disappear」
    ビートの効いた単音が徐々にレイヤーを重ね、激しいビートとベースラインが突然爆発する瞬間は圧巻です。彼らのトレードマークである無機質さと、抑えきれないパッションが見事に表現されています。
  • 「Desperate Guys」
    タイトル通り、どこか切実で、焦燥感に満ちたダンス・ナンバーです。リフのように反復されるシンセサイザーと、ファンキーでありながらも歪んだベースラインが絡み合い、体を揺さぶるグルーヴを生み出しています。楽曲構造はシンプルながら、その音響的な深みが魅力です。
  • 「Birth」
    アルバムタイトルを冠したこの曲は、The Faintの最もダークで実験的な側面を示しています。遅めのテンポで進行し、インダストリアル・ノイズが支配的なサウンドスケープを作り出しています。Todd Finkのボーカルは語りに近く、深いリバーブと共に聴く者を不安で内省的な空間へと引き込みます。
  • 「Symptom Finger」
    本作の中で最もニュー・ウェイヴ色が強く、メロディが際立っている楽曲の一つです。しかし、そのメロディもまた冷徹なシンセ音によって奏でられており、明るさとは程遠い、どこか破滅的な美しさを湛えています。キャッチーでありながらも、攻撃性を失っていないバランスが見事です。
  • 「Dropkick The Punks」
    アルバムの後半のハイライトであり、バンドが持つパンク的なエネルギーが爆発する高速トラックです。シンプルなドラムビートと、ファズの効いたギター(またはシンセベース)が暴れ回り、激しい衝動を直接的に伝えます。ライブでの熱狂が容易に想像できる、アッパーなダンス・パンク・アンセムです。

アルバム総評

『Wet From Birth』は、The Faintがその創造性のピークに達したことを証明するアルバムです。彼らは、ニュー・ウェイヴのレトロな要素を取り入れつつも、それを単なる懐古趣味に終わらせず、ノイズとインダストリアルな要素で塗り固めることで、極めて現代的で個性的なサウンドを確立しました。このアルバムは、暗闇の中で激しく踊り続けるような、矛盾した感情を呼び起こします。冷たさと熱狂、シニシズムと陶酔感が同居するこの作品は、2000年代のダンス・ミュージックとロックの交差点を知る上で、欠かせない一枚であると言えるでしょう。

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