Gorillazの5thスタジオアルバム『Humanz』は、2017年にリリースされました。特にこのDeluxe版は、通常盤に加えてボーナストラックが多数収録されており、その世界観をより深く味わうことができます。仮想バンドであるGorillazがこの作品で提示したのは、混沌とした社会情勢に対するシニカルでありながらも、どこか希望を探そうとする、近未来的なパーティーサウンドです。Damon Albarnの音楽的ビジョンと、多岐にわたる豪華ゲスト陣のコラボレーションが融合し、現代のポップミュージックとエレクトロニックミュージックの最先端を行くサウンドスケープが展開されています。
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ジャンルと音楽性
本作は、Gorillazがこれまで探求してきたオルタナティブ・ロック、ヒップホップ、エレクトロニカといった要素を基盤としつつ、さらにディープなゴスペル、ファンク、ハウス、トラップといったジャンルを取り込んでいます。音楽の中心にあるのは、ダークでシンセサイザーを多用したエレクトロニックサウンドと、政治的・社会的な不安を背景にした終末論的なムードです。しかし、その根底には、豪華ゲスト陣(Grace Jones、Mavis Staples、Vince Staples、Pusha Tなど)が持ち込む多様なヴォーカルとアプローチがダイナミズムを生み出しています。楽曲は全体的にビートが強調され、ダンスフロアを意識した構成が多く見受けられ、彼らのキャリアの中でも特に「都会的でダンス志向」の強い作品に仕上がっています。
おすすめのトラック
- 「Ascension (feat. Vince Staples)」
若きラッパー、ヴィンス・ステイプルズをフィーチャーしたトラップ色の強い楽曲です。終末的なコーラスと、ステイプルズの高速で鋭いラップが絶妙に融合しています。不穏な雰囲気の中にもグルーヴがあり、アルバムのオープニングトラックとして、そのダークな世界観を提示しています。 - 「Andromeda (feat. D.R.A.M.)」
80年代のディスコやファンクを思わせる温かみのあるシンセサウンドが特徴的な、メロウなエレクトロ・ポップです。D.R.A.M.のソウルフルな歌声が加わることで、ノスタルジックでありながらも未来的なダンスナンバーに昇華されており、本作の中でも特にキャッチーで人気が高い一曲です。 - 「Saturnz Barz (feat. Popcaan)」
ジャマイカのレゲエ・アーティストであるポップカーンを迎えた、ダークでスペーシーなレゲエ・トラップです。重低音の効いたベースラインと、ポップカーンのドリーミーなヴォーカルが異世界のような浮遊感を醸し出しています。Gorillazらしい実験性と大衆性のバランスが取れたトラックです。 - 「Strobelite (feat. Peven Everett)」
ディスコ・ファンクとハウスミュージックの要素が融合した、アルバムの中でも特にアップテンポでダンサブルな楽曲です。フィーチャリングのペヴェン・エヴェレットのソウルフルで高揚感のあるヴォーカルが、きらめくシンセサイザーとタイトなビートに乗って展開されます。暗いムードが漂う本作において、ストロボライトの下で無心に踊る一瞬の「解放」を表現したかのような、グルーヴィーなナンバーです。
アルバム総評
『Humanz (Deluxe)』は、単なるアルバムではなく、現代社会を映し出すサウンドトラックであり、多種多様なアーティストの才能を一つのビジョンの下に集結させた、野心的な音楽プロジェクトです。通常盤にボーナストラックが加わることで、そのコンセプトの広がりと深さがさらに増しています。Gorillazの音楽は常に進化し続けていますが、本作は特に「エレクトロニック・ダンスミュージック」の要素を強く押し出し、聴き手に内省と祝祭の両方をもたらす傑作です。混沌とした時代に、踊りながら考えることを促す、彼らからのメッセージが詰まった作品と言えます。


