Suede『Coming Up』
1996年にリリースされた『Coming Up』は、英国ロックの象徴的存在であるSuedeにとって最大の転換点となった作品です。カリスマ的ギタリスト、バーナード・バトラーの脱退という絶望的な状況下で、バンドは弱冠17歳のリチャード・オークスを迎え入れ、見事な復活を遂げました。前作の重厚で内省的な世界観から一転、本作はチャートを席巻するシングルを連発し、彼らをブリットポップの頂点へと押し上げた記念碑的一作です。
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ジャンルと音楽性
本作の核となるのは、デヴィッド・ボウイやT.Rexの系譜を継ぐ「グラム・ロック」の華やかさと、90年代ブリティッシュ・ポップの疾走感の融合です。ブレット・アンダーソンの官能的なボーカルはそのままに、楽曲はよりシンプルでフックの効いたメロディへと研ぎ澄まされました。きらびやかなシンセサイザーとエッジの効いたギターが織りなすサウンドは、都会の夜の喧騒と、そこに生きる若者たちの虚無感や高揚感を鮮やかに描き出しています。
おすすめのトラック
- 「Trash」 アルバムの幕開けを飾る、バンド史上最高のポップ・アンセムです。自分たちを「ゴミ(Trash)」と定義し、疎外された者たちの連帯を歌う歌詞は、当時の若者から熱烈な支持を集めました。流麗なメロディと疾走するビートが完璧に調和しています。
- 「Beautiful Ones」 一度聴いたら忘れられない印象的なギターリフが牽引する一曲です。ロンドンの夜を遊び歩く、美しくも危うい人々を冷笑的かつ賛美的に描いており、ブリットポップ期を象徴する重要な楽曲の一つとして数えられています。
- 「Saturday Night」 アルバムの終盤に配置された、切なくも美しいバラードです。煌びやかな祝祭の裏側にある孤独を表現したようなサウンドは、ブレット・アンダーソンの表現力の深さを際立たせており、夜の静寂によく馴染みます。
- 「Filmstar」 ギラギラとしたギターサウンドが炸裂する、攻撃的でエネルギッシュなロックナンバーです。セレブリティ文化への皮肉を込めつつも、圧倒的なドライヴ感で突き進むこの曲は、ライブにおいても欠かせないハイライトとなっています。
アルバム総評
『Coming Up』は、逆境に立たされたバンドが「ポップであること」を最大の武器として証明した傑作です。全10曲というタイトな構成の中に、捨て曲なしのクオリティが凝縮されており、どの曲を切り取ってもシングルカット可能な輝きを放っています。退廃的な美学を大衆的なポップスへと昇華させた本作は、Suedeというバンドの「不屈の魂」が生んだ、永遠に色褪せない名盤といえるでしょう。



