Siouxsie & The Banshees『Hyaena』
1984年に発表された『Hyaena』は、ポストパンクの女王スージー・スー率いるSiouxsie & The Bansheesの通算6作目となるアルバムです。本作の最大のトピックは、ザ・キュアーのフロントマンであるロバート・スミスがギタリストとして正式に加入していた時期に制作されたという点にあります。彼のサイケデリックなセンスがバンドのダークな美学と化学反応を起こし、それまでのパンキッシュな鋭さとは一線を画す、壮大でオーケストラルな傑作へと結実しました。
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ジャンルと音楽性
本作の音楽性は、従来の「ゴシック・ロック」や「ポストパンク」の枠組みを大きく超えています。重厚なストリングス、きらびやかなピアノ、そしてロバート・スミス特有のドリーミーで歪んだギターが重なり合い、非常に「シネマティック(映画的)」な音像を作り出しています。ジャズやクラシックの要素さえも飲み込んだ複雑なアレンジは、バンドが芸術的な成熟期の絶頂にいたことを証明しており、ダークでありながらどこか熱帯の熱気を感じさせるサイケデリアが全編を覆っています。
おすすめのトラック
- 「Dazzle」 壮大なストリングスの導入から、スージーの力強い歌唱へと繋がるドラマチックなオープニング曲です。「目がくらむ(Dazzle)」というタイトルの通り、まばゆい光と深い影が交錯するような圧倒的なスケール感に圧倒されます。
- 「Dear Prudence」 ビートルズのカバーでありながら、完全にバンシーズの色に染め上げられた一曲です。ロバート・スミスの繊細なギターワークが光る、浮遊感あふれるアレンジが施されています。シングルとして全英3位を記録した、彼らのキャリアを代表するヒット曲でもあります。
- 「Swimming Horses」 スージーの官能的で不穏なボーカルと、優雅なピアノの旋律が印象的なバラードです。まるで水底に沈んでいくような幻想的な感覚を与えてくれる楽曲で、バンドが持つ耽美的な側面が最も美しく表現されています。
- 「Bring Me the Head of the Preacher Man」 西部劇のような乾いた情景と、バンシーズらしい毒気が混ざり合ったユニークな楽曲です。ロバート・スミスのエッジの効いたギターが、砂埃の舞うような荒廃した世界観を演出し、アルバム後半の重要なアクセントとなっています。
アルバム総評
『Hyaena』は、単なるゴシック・ロックのアルバムではありません。パンクの破壊衝動が知的な実験精神へと進化し、そこにサイケデリックな色彩が加わることで完成した、類まれなる「音のタペストリー」です。スージー・スーの表現力はより演劇的になり、ロバート・スミスのギターは楽曲に深い奥行きを与えました。異国情緒と内省的な闇が同居するこのアルバムは、40年以上経った今もなお、聴くたびに新しい発見がある迷宮のような魅力を放ち続けています。



