Supergrass『In It For the Money』
1995年に鮮烈なデビューを飾ったスーパーグラスが、1997年に発表したのが本作『In It For the Money』です。デビュー作『I Should Coco』で見せた「やんちゃな若者」というイメージを保ちつつ、サウンド面では驚異的な進化を遂げました。セルフ・プロデュースによって磨き上げられた本作は、全英チャート2位を記録し、彼らが単なるアイドル的人気のバンドではなく、真に実力のあるミュージシャンであることを世界に知らしめた傑作です。
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ジャンルと音楽性
ジャンルとしては、ブリットポップの文脈にありながらも、パワー・ポップ、サイケデリック・ロック、そしてパブロックの要素が複雑に絡み合っています。前作のパンキッシュな疾走感は影を潜め、代わりにビートルズやザ・フー、あるいはT.Rexを彷彿とさせるような、多層的なコーラスワークとヴィンテージな鍵盤楽器の音色が際立ちます。ミック・クインのうねるベースラインと、ダニー・ゴフィーのダイナミックなドラム、そしてギャズ・クームスの表情豊かなボーカルが、緻密に計算されたアレンジメントの中で躍動しています。
おすすめのトラック
- 「Richard III」 アルバムの幕開けを飾る、重厚で荒々しいギターリフが炸裂するナンバーです。不穏な空気感を纏いながらも、サビでは抜群のメロディセンスが光ります。彼らのロック・バンドとしての力強さを象徴する、エネルギッシュな一曲です。
- 「Cheapskate」 小気味よいギターのカッティングと、跳ねるようなグルーヴが最高にクールな一曲です。70年代のパブロックや初期パンクの匂いを感じさせつつ、スーパーグラスらしいキャッチーなメロディが炸裂しています。バンドの持つ「遊び心」と「キレ」が凝縮されたライブ映えするトラックです。
- 「Going Out」 華やかなホーン・セクションと、力強いピアノの打鍵が印象的なアンセムです。60年代後半のモッズ・サウンドを感じさせつつ、現代的なプロダクションで仕上げられており、ライブでも非常に盛り上がる多幸感溢れる名曲です。
- 「Sun Hits the Sky」 疾走感溢れるビートと、うねるようなシンセサイザーの音が心地よい、サイケ・ポップの傑作です。複雑な曲構成を持ちながら、あくまでポップに響かせる手腕は見事。聴き終えた後に、まさに太陽の光を浴びたような爽快感が残ります。
アルバム総評
『In It For the Money』は、スーパーグラスが「ブリットポップの寵児」から「英国ロックの重鎮候補」へと脱皮した瞬間の記録です。デビュー時の勢いを殺すことなく、実験的なアプローチやクラシックなロックの意匠を巧みに取り入れ、誰にも真似できない独自のグルーヴを作り上げています。洗練されたメロディの裏側に潜む少しの毒気と、音楽を奏でることへの純粋な喜び。その両方が最高のバランスで共存している本作は、発表から数十年が経過した今でも、エバーグリーンな輝きを失っていません。



