Red Hot Chili Peppers『Mother’s Milk』
1989年にリリースされた4作目のアルバム『Mother’s Milk』は、レッチリにとって最大の転換点となった作品です。ギタリストのヒレル・スロヴァクの急逝とドラマーの脱退という悲劇を乗り越え、当時弱冠18歳の天才ジョン・フルシアンテと、圧倒的なパワーを誇るチャド・スミスを迎え入れて制作されました。混沌としたミクスチャー・サウンドが洗練され、世界的なブレイクへと繋がる「黄金のラインナップ」による最初の咆哮がここに刻まれています。
ジャンルと音楽性
ジャンルは「ファンク・ロック」と「ミクスチャー」の極致です。初期のパンキッシュな衝動とスラッピング・ベースの猛攻はそのままに、ジョン・フルシアンテの加入によってメロディアスなギターワークと華やかなコーラスワークが加わりました。ヘヴィメタルに近い重厚なギターリフと、骨太なファンク・グルーヴが激突するサウンドは、90年代のオルタナティブ・ロック・シーンの先駆けとなりました。

Red Hot Chili Peppers/Mother’s Milk
おすすめのトラック
- 「Good Time Boys」 アルバムの幕開けを飾る、エネルギッシュなミクスチャー・ナンバーです。チャドのタイトなドラムとフリーの高速ベースが炸裂し、新加入メンバーのポテンシャルの高さを見せつけます。中盤には当時の仲間の楽曲をサンプリングする遊び心も含まれており、彼らのルーツと勢いを感じさせる一曲です。
- 「Higher Ground」 スティーヴィー・ワンダーの名曲を、驚異的な重量感でカバーしたトラックです。うねるようなスラップ・ベースのイントロはあまりにも有名です。原曲のソウルフルな精神を損なうことなく、強烈なファンク・ロックへと昇華させたこの曲は、バンドが商業的な成功を収める大きなきっかけとなりました。
- 「Knock Me Down」 亡き友ヒレルに捧げられた、切なくも力強いアンセムです。これまでの攻撃的なサウンドとは一線を画す、キャッチーで美しいメロディが特徴です。アンソニーとジョンのボーカルが重なり合う構成は、後の彼らのトレードマークとなる叙情的なスタイルの原型を提示しています。
- 「Taste the Pain」 トランペットの音色が印象的な、非常にグルーヴィーで深みのある楽曲です。フリーによる哀愁漂うトランペットと、ジョンのテクニカルなギターが絶妙なコントラストを生んでいます。単なるファンク・パンクに留まらない、バンドの音楽的な懐の深さを証明している名曲です。
アルバム総評
『Mother’s Milk』は、悲しみを乗り越えたバンドが新しい家族(メンバー)を見つけ、爆発的な創造力を発揮した記念碑的作品です。荒削りな衝動と洗練された構成力が同居しており、どの瞬間を切り取っても「今のレッチリに繋がる遺伝子」を感じることができます。ジョン・フルシアンテの若き日の天才性と、チャド・スミスの鉄壁のビート。この二人が加わったことで、レッチリは単なるカルト・ヒーローから、世界を席巻するロック・レジェンドへと進化を遂げたのです。


