イタリアが生んだ現代ロックシーンの救世主、マネスキン。彼らが2018年に発表したフルアルバム『Il ballo della vita』(生命のダンス)は、ユーロヴィジョンでの劇的な優勝を果たす以前の、フレッシュで衝動的な彼らの魅力が詰まった作品です。タイトルの通り、解放感と生命力に溢れたこのアルバムは、イタリア国内で大ヒットを記録し、彼らを一躍トップスターへと押し上げました。架空のミューズである「マーレーナ」という女性を軸に展開される本作は、弱冠10代(当時)とは思えない表現力と、ロックへの純粋な愛情に満ちています。
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ジャンルと音楽性
本作のジャンルは、ファンキーなグルーヴを基調とした「オルタナティブ・ロック」と言えますが、その枠組みには収まりきらない多様性を持っています。
- ファンクとロックの融合: ベースのヴィクトリアが刻む力強いスラップやダンスミュージックのようなノリが、ギターのトーマスによるロックなリフと絡み合い、踊れるロックを形成しています。
- イタリア語の響き: 英語曲も含まれていますが、メインとなるイタリア語の楽曲では、ダミアーノのハスキーでカリスマ的な歌声がイタリア語特有の韻と重なり、エキゾチックで情熱的な響きを生んでいます。
- アコースティックな側面: 激しいロックナンバーだけでなく、繊細なバラードも収録されており、彼らの音楽的素養の深さが伺えます。
おすすめのトラック
・「New Song」 アルバムの幕開けを飾る、希望に満ちた疾走感溢れるナンバーです。 ファンキーなベースラインと爽やかなメロディが、新しい時代の始まりを予感させます。
・「Torna a casa」 イタリアで社会現象を巻き起こした、魂を揺さぶる美しいバラードです。 マーレーナというミューズへの渇望を歌い上げるダミアーノの表現力は圧巻で、バンドの叙情的な一面を象徴しています。
・「Morirò da re」 「王として死ぬ」という不敵なタイトルが冠された、初期の代表曲です。 中毒性の高いリフと力強いビート、そして自信に満ち溢れたボーカルが、彼らのカリスマ性を強烈にアピールします。
・「Fear for Nobody」 彼らのパンキッシュなエネルギーが爆発する、英語詞のトラックです。 若さゆえの恐れを知らないアティチュードが、攻撃的なリズムに乗せて放たれています。
・「L’altra dimensione」 ジプシー・パンクのような祝祭感を感じさせる、ユニークな一曲です。 ラテン調のリズムとアコースティックな響きが混ざり合い、アルバムに豊かな彩りを添えています。
アルバム総評
『Il ballo della vita』は、単なる新人バンドのデビュー作という域を遥かに超えた、極めて完成度の高いアート作品です。全編を通して、自分たちのスタイルを貫き通そうとする「自由」への意志が感じられ、聴く者の心を解放してくれます。後の世界進出で見せる洗練されたサウンドの「種」がすべてここにあり、彼らのアイデンティティを理解する上で避けては通れない一枚です。荒々しくも美しい、イタリアが誇る最高の「生命のダンス」をぜひ体感してください。


