1989年にリリースされたThe Ocean Blueのデビューアルバム『The Ocean Blue』は、当時のアメリカのメインストリームとは一線を画す、極めて洗練されたサウンドで世界を驚かせました。アメリカ・ペンシルベニア州出身の彼らですが、その音像はまるでイギリスのマンチェスターやブリストルの風景を彷彿とさせます。当時まだ高校生も含まれていたという若き才能たちが作り上げたこの作品は、ビルボード・チャートでも成功を収め、ドリーム・ポップやシューゲイザーの先駆けとしても再評価され続けています。
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ジャンルと音楽性
本作のジャンルは、ドリーム・ポップ、ギター・ポップ、そしてニュー・ウェイヴの幸福な混血と言えます。エコーが深くかかった瑞々しいギターのアルペジオ、透明感あふれるデヴィッド・シュルツのボーカル、そして楽曲に奥行きを与える上品なキーボードの旋律が特徴です。ザ・スミス(The Smiths)の繊細さや、エコ・アンド・ザ・バニーメン(Echo & the Bunnymen)の耽美的な響きを感じさせつつも、アメリカのバンドらしい爽やかでどこか希望を感じさせるポップ・センスが、アルバム全体を心地よい多幸感で包み込んでいます。
おすすめのトラック
- Between Something and Nothing アルバムの幕開けを飾る代表曲です。疾走感のあるビートに乗せて、キラキラと輝くギターのリフが重なり合う様は、まさに1980年代後半のギター・ポップの理想形と言える完成度を誇ります。
- Drifting, Falling タイトル通り、浮遊感のあるメロディが印象的な楽曲です。繊細なボーカルが夢の中に誘うような心地よさを演出し、ドリーム・ポップとしての彼らの実力が遺憾なく発揮されています。
- Frigid Winter Days タイトルの通り「冷たい冬の日」を彷彿とさせる、静謐で美しいナンバーです。ひんやりとしたギターの音色と、透き通ったボーカルが織りなす空間は、アルバムの中でも特に高い芸術性を感じさせます。
- Love Song シンプルながらも深く心に残るメロディラインが魅力の楽曲です。過度な装飾を削ぎ落としたからこそ際立つ、彼らの純粋なポップ・センスとロマンティシズムが凝縮されています。
- Vanity Fair より深い内省と美しい風景描写を感じさせる名曲です。聴き終わった後に、一枚の風景画を眺めたような清々しい余韻を残してくれます。
アルバム総評
『The Ocean Blue』は、時代や流行に左右されない「普遍的な美しさ」を持ったアルバムです。派手なエフェクトや過激なパフォーマンスに頼ることなく、良質なメロディと誠実な演奏だけで、ここまで豊かな世界観を構築できることを証明しました。日常の喧騒から離れたいとき、あるいは静かな午後の光の中で音楽に浸りたいとき、この「青い」サウンドはいつでもあなたの心を優しく癒してくれるでしょう。インディー・ポップの歴史に刻まれた、文字通り「宝石」のような一枚です。


