フロリダを拠点に活動するマルチ奏者、quannnic(クアンニック)が発表した『Warbrained』は、インターネット・ネイティブな世代が生み出したシューゲイザーの極北とも言える作品です。デビュー作で見せた瑞々しい感性を、より重厚で、時に暴力的なまでのノイズでコーティングした本作は、SNSやデジタルな繋がりの中で肥大化する「個人の孤独」を見事に音像化しています。
⬇️アマゾンミュージックで『Warbrained』をチェック⬇️
Amazon.co.jp: Warbrained [Explicit] : quannnic: デジタルミュージック
Amazon.co.jp: Warbrained : quannnic: デジタルミュージック
ジャンルと音楽性
本作は、90年代のシューゲイザー、グランジ、そしてゼロ年代のインダストリアルやエモを現代の感性でミキシングした「モダン・ディストーショナル・ポップ」とも呼べるスタイルを確立しています。
- 「壁」のようなサウンド: マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン的なレイヤー構造。
- ダイナミクス: スロウ・コア的な静謐さと、感情の爆発をそのまま表現したような轟音の対比。
- デジタル・メランコリー: インターネット文化特有の、どこか浮世離れした浮遊感と切なさが同居しています。
おすすめのトラック
- 「Wrenches」 アルバムの看板とも言える楽曲。地の底を這うような重いベースラインと、サビで一気に解放されるギターノイズが、聴き手の感情を強く揺さぶります。
- 「Prunesnail」 抑制されたボーカルが、不穏にうねるノイズの中で泳ぐような一曲。後半にかけて高まっていく緊張感は、息を呑むほどの美しさです。
- 「Aviator」 メロディアスな要素が強く、quannnicのソングライティングの才能が光るトラック。疾走感がありながらも、常に霧の中にいるような幻想的な響きを持っています。
- 「Heavensafe」 美しくも悲しいメロディが、ノイズのカーテンに包まれた聖域のような楽曲。タイトルの通り、安全な場所を求める切実な願いが感じられます。
- 「Observer」 ノイズの密度が最も高く、混沌を極めた一曲。カオスの中にある種の秩序と美しさを感じさせる、アルバムのハイライトの一つです。
アルバム総評
『Warbrained』は、ただ過去のジャンルを模倣したリバイバル作品ではありません。quannnicという一人の人間が、現代というノイズに満ちた世界を生き抜くために必要とした「心の防護壁」のようなアルバムです。
聴き終えた後に残るのは、耳をつんざくような残響と、それとは対照的な心の静寂。激しい音像の中にこそ、真の優しさが宿っていることを教えてくれる一枚です。今の音楽シーンに退屈しているなら、この轟音の洗礼を受けるべきでしょう。


