プライマル・スクリームの12作目となるアルバム『Come Ahead』は、彼らの長いキャリアにおいて新たな章を刻む作品だ。フロントマンのボビー・ギレスピーの自伝『Tenement Kid』からインスピレーションを得ており、彼の個人的な経験や社会的メッセージが色濃く反映されている。プロデューサーにはデヴィッド・ホルムスを迎え、バンドの持つファンキーでサイケデリックな要素と、伝統的なロックンロールのスタイルを巧みに融合させている。
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アルバムの音楽性:過去と現在の融合
『Come Ahead』のサウンドは、プライマル・スクリームの多面的な音楽性を象徴している。60年代のガレージロックやブルース、90年代のマッドチェスター・ムーブメントの影響がありながらも、現代的なプロダクションによって洗練された仕上がりになっている。ギレスピーの歌詞はよりパーソナルな側面を持ちつつも、社会的なメッセージも強く打ち出しており、これまでの彼らの作品と比べてもより内省的かつ哲学的な内容が目立つ。
おすすめのトラック
- 「Ready to Go Home」
アルバムの幕開けを飾るこの曲は、ゴスペル風のコーラスと壮大なアレンジが特徴的。ギレスピーの父親への思いが込められた感動的なナンバーであり、バンドの新境地を感じさせる。 - 「False Flags」
労働者階級の若者が軍に志願し、中東の戦場へ向かうというストーリーを描いた一曲。シンプルなメロディながら、歌詞の持つストーリーテリングの力が強く、ギレスピーの社会的な視点が表れている。 - 「Settlers’ Blues」
イギリスの植民地主義をテーマにしたナンバーで、歴史的な出来事と現代社会の問題を重ね合わせた深みのある楽曲。ブルースの要素が色濃く出たアレンジが印象的だ。 - 「Love Insurrection」
アルバムの中でも特にダンサブルな楽曲で、陰謀論や圧政、貧困や戦争に対する怒りを背景にしながらも、愛による革命を呼びかけるメッセージが込められている。シンセサウンドとファンキーなリズムが絡み合い、ライブ映えしそうなエネルギッシュな一曲。
進化し続けるプライマル・スクリームの真価
『Come Ahead』は、プライマル・スクリームが単なるロックバンドではなく、時代とともに進化し続けるアーティスト集団であることを再確認させてくれる作品だ。デヴィッド・ホルムスのプロデュースによって、アルバム全体に統一感のあるサウンドが生まれ、ギレスピーの個人的な経験や社会的なメッセージがより際立つものになっている。アルバムの後半でやや勢いが落ちるとの指摘もあるが、それでもバンドの音楽的探求心と創造力が詰まった一枚であることは間違いない。
『Come Ahead』は必聴の一枚
プライマル・スクリームは、これまでも時代ごとにサウンドを進化させ、挑戦を続けてきた。本作もまた、その流れを継承しつつ、彼らの新たな境地を切り開く一枚となっている。彼らのファンはもちろん、新たにバンドの魅力を知りたいリスナーにとっても、聴く価値のあるアルバムだ。