1971年に発表されたT. Rexのアルバム『Electric Warrior(邦題:電気の武者)』は、音楽史における大きな転換点となった作品です。フロントマンであるマーク・ボランの溢れんばかりのカリスマ性と、プロデューサーのトニー・ヴィスコンティによる魔法のようなサウンドメイクが融合し、イギリス国内で爆発的な「T. Rextasy(T.レックスタシー)」を巻き起こしました。アコースティックなフォーク・ロックから、文字通り「電気」を纏った官能的なロックンロールへと変貌を遂げた本作は、グラム・ロックというジャンルを定義づけた最高傑作として、今なお多くのアーティストに影響を与え続けています。
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ジャンルと音楽性
本作の核となるジャンルは「グラム・ロック」です。それまでのヒッピー文化や難解なプログレッシブ・ロックへの対抗として、よりシンプルで、より華やか、そして徹底的にセクシャルな表現が追求されています。 音楽的な特徴は、ブギ(Boogie)をベースにした粘り気のあるリズムと、エレクトリック・ギターの歪んだ響き、そしてストリングスやバッキング・ボーカルが織りなす重層的な響きにあります。マーク・ボランの囁くような歌声は、時には中性的で、時には攻撃的な色気を放ちます。派手な衣装やメイクという視覚的要素とリンクしたそのサウンドは、聴く者を非日常の世界へと誘う、まさに「魔法の音楽」と言えるでしょう。
おすすめのトラック
- 「Mambo Sun」 アルバムの幕開けを飾るこの曲は、抑制されたテンポの中に強烈な官能性を秘めています。 ミニマルなギターリフと囁くようなボーカルが、リスナーを一気にマーク・ボランの夢幻的な世界観へと引き込みます。
- 「Cosmic Dancer」 「墓場から踊り出た」という印象的な歌詞で始まる、フォークとグラムの融合点とも言える名曲です。 美しく哀愁漂うストリングスの旋律が、マーク・ボランの刹那的な美学を象徴しており、映画音楽のようなドラマチックな深みを持っています。
- 「Jeepster」 ブルースやロカビリーの要素を現代(当時)にアップデートした、中毒性の高いロックンロールです。 弾むようなビートと情熱的なギターサウンドが特徴で、思わず体が動き出してしまうようなプリミティブな躍動感に満ちています。
- 「Get It On」 T. Rex最大のヒット曲であり、ロック史上最も有名なリフの一つを持つ楽曲です。 シンプルでありながら極めて贅沢なサウンド構成で、ブギの快楽を極限まで引き出しています。マークのカリスマ性が頂点に達した瞬間を捉えた一曲です。
- 「Life’s a Gas」 アルバムの終盤に配置された、非常に優しく切ないバラード曲です。 「人生は楽しい」と歌いながらも、どこか寂しげな余韻を残すこの曲は、派手なグラム・ロックの裏側にある繊細な素顔を感じさせてくれます。
アルバム総評
『Electric Warrior』は、単なるヒット・アルバムの枠を超え、一つの文化的なマニフェストとしての価値を持っています。マーク・ボランが提示した「ロックは楽しむものであり、美しくあるべきだ」という姿勢は、後のパンクやニュー・ウェーヴ、そして日本のヴィジュアル系など、枚挙にいとまがないほどのジャンルに影響を及ぼしました。 全ての音が贅沢で、全ての言葉が魔法のように響く本作は、発売から半世紀以上が経過した現在でも、その輝きを一切失っていません。ロックが持つ本来の「スリル」と「美しさ」を再確認したいなら、この「電気の武者」こそが最良の選択となるはずです。



