1988年にリリースされたハッピー・マンデーズのセカンド・アルバム『Bummed』は、後のマッドチェスター・ムーブメントを決定づける重要な作品として知られる。ポストパンク、アシッドハウス、ファンク、サイケデリアを融合させた独特のサウンドが特徴で、カオスとエネルギーに満ちた作品だ。プロデューサーに元John Cale(The Velvet Underground)を迎え、バンドのアグレッシブでラフな音像をさらに歪ませ、トリップ感のあるグルーヴを生み出している。
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アルバムの背景と特徴
Happy Mondaysは、マンチェスターの音楽シーンにおいて、The Stone Rosesと並ぶマッドチェスター・ムーブメントの象徴的な存在だ。『Bummed』は彼らのサウンドを確立したアルバムであり、当時のUK音楽シーンに衝撃を与えた。ポストパンクの尖った感覚を残しつつ、アシッドハウスやクラブミュージックの影響を取り入れたサウンドは、後に登場するブリットポップやダンス・ロックにも影響を与えている。
ジョン・ケールのプロデュースのもと、アルバムは生々しいバンドのエネルギーとサイケデリックな音響処理が特徴的。ショーン・ライダーのラフなボーカルと独特のリズム感、そしてビザールなリリックが、アルバム全体に危うさと狂気を与えている。
おすすめのトラック
- 「Wrote for Luck」
アルバムのハイライトとも言えるトラックで、ファンキーなベースラインと奇妙に絡み合うギター、ライダーのルーズなボーカルが特徴。後にリミックスされたバージョンがクラブシーンで人気を博し、バンドの代表曲となった。 - 「Mad Cyril」
狂ったようなビートとノイジーなギターが印象的な曲。タイトルは『Clockwork Orange』(時計じかけのオレンジ)に登場するアレックスの言葉「Mad Cyril」から取られており、その名の通りカオスでサイケデリックな雰囲気に満ちている。 - 「Lazyitis」
ローリング・ストーンズの「Sympathy for the Devil」を彷彿とさせるリズムパターンに、ライダーの脱力したボーカルが乗る。音の隙間が絶妙で、グルーヴィーかつサイケデリックな一曲。 - 「Bring a Friend」
じわじわと迫ってくるベースとドラムが心地よく、じっくり聴くほどクセになる。
総評
『Bummed』は、Happy Mondaysの原点とも言える重要作であり、マッドチェスター・ムーブメントの礎を築いたアルバムだ。ラフで暴力的なグルーヴ、ドラッグカルチャーと密接に結びついた陶酔感、クラブとロックの境界を曖昧にするサウンド――すべてが詰まった作品である。
粗削りながらも、どこか洗練された魅力があり、ポストパンクの衝動と、アシッドハウスのトランシーな浮遊感が絶妙に混ざり合っている。Happy Mondaysはここからさらに開花し、『Pills ‘n’ Thrills and Bellyaches』で大ブレイクを果たすが、本作は彼らの本質がもっともピュアな形で記録された作品と言えるだろう。
『Bummed』は、ポストパンクの鋭さ、ダンスミュージックのグルーヴ、そしてカオスなエネルギーが見事に融合した作品だ。Happy Mondaysの放つユニークな魅力が詰まっており、マッドチェスターの狂騒を体感できる一枚。マンチェスター・シーンを語るなら絶対に外せないアルバムだ。