不器用な愛とギターが鳴る、UKインディ流ラブソングの現在地
イギリスを代表するインディー・ロックバンド、The Vaccines(ザ・ヴァクシーンズ)が、通算6枚目となるアルバム『Pick-Up Full Of Pink Carnations』をリリースしました。前作までの実験的なアプローチを経て、今作で彼らが辿り着いたのは、デビュー当時の初期衝動を彷彿とさせるストレートなギターサウンドと、誰もが抱く「期待と現実のギャップ」という普遍的なテーマです。創設メンバーの脱退という転換期を経て制作された本作は、切なさを抱えながらも、最後には前を向かせてくれるような、バンドにとっての新たな金字塔となっています。
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ジャンルと音楽性
本作のジャンルは、王道のインディー・ロック、あるいはパワー・ポップに分類されます。1950年代や60年代のオールディーズが持つ甘いメロディラインを、現代の解釈でエネルギッシュなロックへと昇華させているのが特徴です。煌めくようなギターのリフ、疾走感あふれるリズム隊、そしてフロントマン、ジャスティン・ヤングのどこか憂いを帯びたボーカルが重なり合い、非常に高い中毒性を生み出しています。「失われた夢」や「記憶」を歌いながらも、サウンド自体は非常に明るくポジティブで、その対比が楽曲に深みを与えています。
おすすめのトラック
- 「Sometimes, I Swear」 孤独感を抱えながらも、どこか誇らしげに響くアンセムです。スタジアムで大合唱される光景が目に浮かぶような、エモーショナルな高揚感に満ちています。
- 「Heartbreak Kid」 これぞヴァクシーンズといった、キャッチーなメロディとパンキッシュな勢いが詰まった一曲です。失恋の痛みさえもダンスフロアで踊り飛ばせるような爽快感があります。
- 「Lunar Eclipse」 80年代のニューウェイブを彷彿とさせる、シンセサイザーとギターの絡みが印象的なトラックです。浮遊感のあるメロディが、夜のドライブにぴったりの雰囲気を醸し出しています。
- 「Love To Walk Away」 非常にタイトなビートと、耳に残るコーラスが特徴です。シンプルながらも洗練された楽曲構成に、バンドとしての成熟したソングライティング能力が光ります。
- 「The Dreamer」 アルバムを締めくくるにふさわしい、メロディアスでスケール感のある楽曲です。日常の中に潜む希望や、夢を追い続けることの美しさを描き出すリリックが、リスナーの心に深く寄り添います。
アルバム総評
『Pick-Up Full Of Pink Carnations』は、ザ・ヴァクシーンズが自分たちのアイデンティティを再確認し、それを最高の形で表現した傑作です。複雑な装飾を削ぎ落とし、ロックンロールが持つ「楽しさ」と「切なさ」の両面を際立たせることに成功しています。どの曲も3分前後で完結するタイトな構成でありながら、聴き終わった後には映画を一本見終えたような充足感が残ります。時代に流されない、純粋なギターロックの魔法を信じさせてくれる一枚です。



