ウェールズ出身のロック・デュオ、James and the Cold Gunが満を持して2025年にリリースした最新アルバム『Face in the Mirror』は、前作の初期衝動的な魅力から一歩踏み出し、より深く、洗練されたサウンドを提示しています。Vo/GtのJames JosephとDrのJames Watkinsというミニマルな編成ながら、彼らが放つ音は、現代のデジタル社会で生きる上での内省的な問いかけと、それに対する爆発的なエネルギーの解放が融合したものです。パンクの獰猛さを持ちつつも、緻密に構築されたメロディワークとプロダクションは、彼らを単なるラウド・バンドから新時代のオルタナティブ・ロックの旗手へと昇華させています。
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ジャンルと音楽性
彼らの核にあるのは、90年代のグランジやUKロックの重厚なギターサウンドですが、今作ではポスト・パンクやインダストリアルな要素が加わり、音楽性の幅が大きく広がっています。特徴的なのは、シンプルなギターリフの中に潜む複雑なリズムと、時に電子的なテクスチャを混ぜ込む実験性です。この進化により、サウンドはより立体的になり、現代的な冷たさと、人間的な熱量が共存する独特のグルーヴを生み出しています。感情を叩きつけるようなヴォーカルと、タイトかつダイナミックなドラミングは、健在です。
おすすめのトラック
このアルバムの核となる、彼らの魅力を凝縮した必聴の4曲をご紹介します。
・「Face in the Mirror」 内省的な歌詞と、疾走感あふれる攻撃的なリフが完璧に融合したアルバムのタイトル曲です。シンプルな構成の中に、自己との対峙から生まれる葛藤と、それを打ち破る爆発的なロックンロール・エネルギーが詰まっています。
・「Guessing Games」 アルバムの中でも際立ってキャッチーでアップテンポなナンバーです。遊び心のある軽快なギターと、思わず口ずさみたくなるようなメロディが特徴ですが、その裏には社会に対するシニカルな視点が隠されています。初期の彼らの勢いを彷彿とさせる一曲です。
・「Riding the Tiger」 ヘヴィなリフと、粘り気のあるグルーヴが特徴的なミッドテンポの楽曲です。曲が進むにつれて緊張感が高まり、中盤からのカオスな展開を経て、再びタイトなリズムに戻る構成は圧巻。彼らの演奏技術と構成力の高さが光っています。
・「Cut the Brakes」 アルバムの終盤に配置され、聴き手に強烈なフィナーレを印象づける激しいロックアンセムです。「ブレーキを切れ」というタイトルの通り、一切の迷いを断ち切るような爆発力を持っています。ヴォーカルの叫びが胸を突き刺す、まさに激情のトラックです。
アルバム総評
『Face in the Mirror』は、James and the Cold Gunがただの「うるさい」バンドではなく、「考えさせる」バンドへと成長したことを示す傑作です。音作り、テーマ性、そして演奏技術のすべてにおいて高いレベルにあり、2025年のロックシーンにおける最も重要なリリースの一つと言えるでしょう。自己と社会との間で揺れ動く感情を見事に音楽へと昇華させたこの作品は、多くのリスナーにとって、鏡に映る自分自身と向き合うきっかけを与えてくれるはずです。


