1991年にリリースされたblurのデビューアルバム『Leisure』は、イギリスのロックシーンに新たな潮流を示した作品です。当時はまだ「ブリットポップ」という言葉が一般的になる前で、シューゲイザーやマッドチェスターの余韻を強く感じさせるサウンドを基盤にしながらも、のちのブラーらしいアイロニーやポップセンスがすでに芽生えているのが特徴的です。アルバム全体からは、当時のUKインディシーンの多様な影響を取り込みつつ、まだ発展途上ながらも確固とした個性を打ち出そうとするバンドの姿勢が浮かび上がります。
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ジャンルと音楽性
『Leisure』は、マッドチェスターのグルーヴ感とシューゲイザー的なギターの厚みを組み合わせた、時代を象徴するサウンドが中心です。デーモン・アルバーンのヴォーカルはまだ荒削りながらも、独特の抑揚とキャッチーなメロディセンスが際立ち、のちに世界的バンドへと成長する萌芽を感じさせます。さらに、グレアム・コクソンのギターは浮遊感と攻撃性を行き来し、アレックス・ジェームスのベースとデイヴ・ロウントゥリーのドラムによるリズムセクションはクラブカルチャーとも接点を持つダンサブルな要素を取り入れています。ジャンルの境界を超えた雑食的な姿勢こそが、blurの始まりを象徴しているといえるでしょう。
おすすめのトラック
- 「She’s So High」
デビューシングルにして、バンドの存在感を世に知らしめたナンバー。サイケデリックでゆったりとしたメロディと、シューゲイザー的なギターの重層感が印象的で、まだ粗削りながらもblurの独自性を感じさせます。 - 「There’s No Other Way」
マッドチェスター的なビートとサイケポップの要素を組み合わせた代表曲。ダンサブルかつ中毒性のあるリフが当時のUKチャートで大ヒットし、blurの名前を一気に広めた重要なトラックです。 - 「Bang」
よりストレートにダンスフロアを意識した楽曲で、シンプルながらも疾走感があり、バンドの若さと勢いが感じられる一曲。 - 「Sing」
『Leisure』の中でも異色の存在で、シネマティックかつアンビエントな空気を持つ楽曲。のちの『Trainspotting』のサウンドトラックに収録され、再評価を受けたことで知られています。初期blurの中でも実験性の高さを示す一曲です。 - 「Fool」
サイケポップ的なアプローチが際立つ曲で、アルバムのカラフルなサウンドの一端を担っています。
アルバム総評
『Leisure』は、のちの『Modern Life Is Rubbish』以降のブリットポップ的サウンドを予兆する部分もありますが、基本的にはシーンの流行を反映した「時代の産物」としての側面が強い作品です。それでも、「She’s So High」や「There’s No Other Way」といった楽曲からはすでにblur特有のキャッチーさやひねりの効いたセンスが見えており、単なる流行に埋もれない個性を放っています。若さゆえの未成熟さと、ジャンルを自在に取り込む柔軟さが同居するこのアルバムは、90年代UKロックのスタート地点を語るうえで欠かせない一枚です。blurの後の進化を知るファンにとっては、その原点を確認できる重要な作品といえるでしょう。