1987年にリリースされたD.R.I.のサード・アルバム『Crossover』は、パンク・ロックとスラッシュ・メタルの融合を決定づけた歴史的な作品であり、その後の音楽シーンに大きな影響を与えました。本作は、それまでバンドが得意としていた高速で短いハードコア・パンクの楽曲群から、より長く、複雑な構成を持つスラッシュ・メタル寄りの楽曲へとシフトしています。タイトルが示す通り、ハードコアとメタルの「クロスオーバー」というジャンルを確立した金字塔と言えるでしょう。このMillennium Editionは、オリジナルアルバムに加えて、デモ音源やライヴトラックなどが追加収録されており、この重要作の全貌を知る上で貴重な資料となっています。
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ジャンルと音楽性
本作の音楽性は、ハードコア・パンクの持つスピード、攻撃性、反骨精神と、スラッシュ・メタルのテクニカルなリフ、重厚なサウンド、複雑な曲展開が見事に融合しています。ボーカルのスパイク・キャシディの鋭いシャウトはパンクのルーツを感じさせつつも、ドラムのフェード・ビドルやギタリストのカート・ブレヒトによる演奏は、まさにスラッシュ・メタルそのものです。特にブレヒトのリフは強烈で、ザクザクとした刻みとメロディックなソロが組み合わさり、ハードコアファンとメタルファンの両方を熱狂させました。楽曲のテンポチェンジやダイナミクスの使い方が巧みであり、単なるスピード狂のバンドではない、洗練された音楽的知性が感じられます。
おすすめのトラック
- 「The Five Year Plan」
アルバムのオープニングを飾る、約5分の長尺曲です。パンク時代には考えられなかった複雑な構成を持ち、スピード感あふれるパートから、重々しいミドルテンポのパートへの展開がドラマチックです。歌詞は資本主義社会の計画性や将来の不安をシニカルに描いています。 - 「Hooked」
非常にキャッチーなリフと、フックの効いたサビが印象的な楽曲です。タイトなドラミングと激しいギターサウンドが一体となって疾走し、彼らのクロスオーバー・スタイルが最も分かりやすく表現されています。ライヴでも定番の人気の高いナンバーです。 - 「Tear It Down」
一瞬で聴く者の耳を掴む、攻撃的なリフが特徴のナンバーです。純粋なハードコアの血が色濃く残る、短くも強力な曲で、社会の欺瞞や既存のシステムを破壊したいというパンク的な怒りがストレートに表現されています。 - 「Probation」
スパイク・キャシディのボーカルが際立つ、エネルギッシュなトラックです。社会や権威からの監視・抑圧に対するフラストレーションを歌い上げており、聴く者に共感を呼び起こします。彼らの持つ切迫感と初期衝動が爆発したような、疾走感あふれる一曲です。
アルバム総評
『Crossover』は、D.R.I.のキャリアにおいて、そしてクロスオーバー・スラッシュというジャンル全体において、間違いなく頂点に立つ作品の一つです。ハードコア・パンクの熱量とスラッシュ・メタルの技術的な完成度を高次元で両立させたこのアルバムは、ジャンルの壁を打ち破り、その後の多くのバンドに影響を与えました。パンク/ハードコアのスピードとメタルのリフワークを愛するすべてのリスナーにとって、本作は歴史的な意義と純粋な興奮を提供する必聴の名盤です。Millennium Editionで追加されたトラックも、バンドの当時の状況を知る上で価値があります。



