1976年、アメリカのロックバンドKissがリリースした4作目のスタジオアルバム『Destroyer』は、彼らのキャリアを決定づける一枚として語り継がれている。派手なメイクと火を吹くステージ演出で知られる彼らだが、本作ではプロデューサーに名匠ボブ・エズリンを迎え、より構築的でドラマティックな音作りに挑戦。ハードロックの枠を超えて、シアトリカルな演出とメロディの美しさが融合した傑作となっている。
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ジャンルと音楽性
『Destroyer』はハードロック、グラムロックを基調としながら、クラシカルなオーケストレーションやポップなアレンジも取り入れた多層的な作品だ。ボブ・エズリンのプロデュースにより、Kiss特有のエネルギッシュなギターリフと重厚なリズムセクションはそのままに、ピアノやストリングス、子供のコーラスなど、意表を突くアレンジが多数登場する。単なるライブバンドから、スタジオでも表現力豊かな音楽を創れるバンドへと進化した瞬間でもある。
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おすすめのトラック
- 「Detroit Rock City」
アルバム冒頭を飾る代表曲で、疾走感あふれるギターリフとドラマティックな展開が魅力。冒頭のラジオ放送風のSEから、一気にエンジン全開のロックへ突入する構成は、アルバムの幕開けにふさわしい。 - 「King of the Night Time World」
続く2曲目は、Kissのダークでゴシックな世界観を感じさせるミディアムテンポのロック。ポール・スタンレーのボーカルと、エズリンによる重厚なプロダクションが印象的。 - 「God of Thunder」
ジーン・シモンズがリードを取る、重くうねるような一曲。低音ヴォーカルと不気味なSEが特徴で、Kissの“悪魔的”なイメージを決定づけた重要なトラック。 - 「Shout It Out Loud」
明快なコーラスとキャッチーなメロディで、ライブでも人気の高い一曲。観客との一体感を生む“アンセム”的ナンバーであり、シングルヒットも記録した。 - 「Beth」
本作最大の意外性であり、Kissにとって最大のヒット曲。ピーター・クリスがボーカルを務めたピアノバラードで、オーケストラの美しい旋律が感情を高める。ハードロックバンドがこんなにも繊細なバラードを歌えるという驚きが詰まっている。
アルバム総評
『Destroyer』はKissが単なるステージバンドから、音楽的な進化を遂げたことを証明する重要な作品である。単に“派手なロック”にとどまらず、構成力、演出、メロディの豊かさといった面で、70年代ロックアルバムの金字塔とも言える内容に仕上がっている。ハードロックファンはもちろん、音楽的に多様なテイストを楽しみたいリスナーにとっても、今なお聴き応えのある名盤だ。