スイス出身の電子音楽デュオ、Yello(イエロー)が1985年にリリースした4枚目のアルバム『Stella』は、彼らにとって大きな転機となった作品だ。初めて世界的な成功を収めたこのアルバムは、エレクトロニカの斬新な可能性を提示しながらも、どこかポップで親しみやすい仕上がり。奇抜なサウンドと洗練されたプロダクションが融合した本作は、今なお80年代電子音楽の代表格として高く評価されている。
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ジャンルと音楽性
『Stella』は、シンセポップ、エレクトロニカ、ニューウェーブといった要素が絡み合う実験的かつ洗練された作品。Yelloの音楽は、ドイツのクラウトロックの流れを汲みながらも、ユーモアと独自の美意識を織り込んでおり、一般的なエレクトロポップとは一線を画している。
Boris Blankによる緻密で立体的なサウンド・デザイン、そしてDieter Meierの低音ボイスによるスポークン・ワード風のヴォーカルが、Yello独自の世界観を作り上げている。『Stella』はその中でも特にキャッチーで映像的、そしてどこかシネマティックな質感が特徴だ。
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おすすめのトラック
- 「Oh Yeah」
Yello最大のヒット曲にして、映画『フェリスはある朝突然に』でも使用された象徴的トラック。重低音の「Oh yeah…」というフレーズは、シンプルながらも耳に残る。「音で遊ぶ」ことの楽しさと実験精神が結実した一曲。 - 「Desire」
ムーディーで情熱的なこのトラックは、ラテン調のリズムと官能的なムードが印象的。映画のサウンドトラックのようなドラマティックな展開は、リスナーを異国へ誘う旅のようだ。 - 「Vicious Games」
エレクトロニックでありながらどこか切なげなメロディが心を打つ一曲。Yelloにしては珍しく女性ボーカル(Rush Winters)が全面的にフィーチャーされており、哀愁と妖艶さが同居するサウンドが魅力的。 - 「Koladi-Ola」
不思議な音の連なりと、リズム感のずれがクセになるインストゥルメンタル。まるで未来都市を描いた短編SF映画を思わせるような、映像的な広がりを感じさせる。 - 「Domingo」
ラウンジミュージックのようなリズムに、ダダイズム的な言葉遊びが重なる、Yelloの遊び心が詰まった一曲。アルバムの中でホッとひと息つける異色の存在でもある。
アルバム総評
『Stella』は、Yelloが音の職人であることを世界に知らしめた一枚だ。大胆でありながらも緻密。ふざけているようでいて、どこまでも計算されつくしている。ポップスとしての親しみやすさを保ちつつ、前衛的な電子音楽としての魅力も損なわない見事なバランス感覚が光る。
80年代エレクトロニカの名盤であると同時に、現在のクラブミュージックやシンセポップにも多大な影響を与えた金字塔的作品。奇抜なだけでは終わらない、普遍的な魅力を持つ一枚として、今こそ再評価されるべきアルバムである。