1981年にリリースされたYELLOW MAGIC ORCHESTRA(YMO)の『テクノデリック』は、バンドの音楽的転換点を象徴するアルバムであり、当時の音楽シーンにおけるテクノポップの概念を大きく拡張した革新的な作品です。コンピュータ制御によるサンプリングやシーケンスが大胆に導入され、より実験的でミニマルなアプローチが追求されたこのアルバムは、後のエレクトロニカやテクノの潮流を先取りするかのような先見性を放っています。
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ジャンルと音楽性
『テクノデリック』は、従来のYMOが得意としていたポップでキャッチーなメロディーをやや控え、アヴァンギャルドかつ抽象的なサウンドスケープへと舵を切ったアルバムです。インダストリアル、ミニマル、実験音楽の要素が色濃く、Roland MC-4やLinn LM-1など当時の最新機材を駆使して緻密に構築されたサウンドは、無機質でありながらどこか人間味を残しています。歌詞には英語と日本語が交錯し、政治的・社会的なメッセージ性も帯びています。
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おすすめのトラック
- 「ジャム」
冒頭を飾るこの曲は、弾むようなベースラインと無機質なリズムが特徴。ヴォーカルとサンプリングの絶妙なレイヤーが、不穏さと浮遊感を同時に演出し、アルバム全体の方向性を示しています。 - 「階段」
短くも印象的なインストゥルメンタルで、サウンドエフェクトが階段を登るように構成されている構造美が際立つ。YMOらしい遊び心と実験性が垣間見える楽曲です。 - 「新舞踏」
民族音楽の断片やエキゾチズムを感じさせながらも、冷たい電子音で構成されたこの曲は、東アジアの都市風景とデジタル未来が交錯するような音世界。YMOの世界観が最も表れている一曲といえるでしょう。 - 「手掛かり」
アルバムの終盤に配置されたミディアムテンポのナンバーで、シンプルなコード進行と冷たいボーカルが印象的。内省的な雰囲気をたたえ、アルバムの締めくくりにふさわしい静けさを湛えています。 - 「体操」
無機質な電子音と独特のリズムが、80年代初期の未来感覚をそのまま体現しており、まるで機械が律動的にエクササイズしているかのようなユーモアも感じられる1曲。YMOの前衛性と遊び心が詰まった作品です。
アルバム総評
『テクノデリック』は、YMOというユニットの持つ未来感覚とアート性が、最も鋭利な形で表出した作品です。リスナーにとっては一聴して分かりやすいポップさが希薄なぶん、何度も聴くことでその構造的な美しさやメッセージ性が浮かび上がってくる、いわば「育つ」アルバム。後のテクノ、IDM、グリッチといったジャンルに多大な影響を与えたことは言うまでもなく、今なお新鮮さを失わないサウンドは、電子音楽の金字塔として語り継がれるべき1枚です。