セルビア出身のプロデューサーX-Coastによるアルバム『Pianissimo』は、そのタイトルが示すように、音楽の“静寂”や“繊細さ”をテーマにしつつも、クラブカルチャーの熱気を巧みに内包した作品だ。ラフでレイヴィーなイメージが強かった彼のサウンドが、今作ではより洗練され、音の重なりや余白にこだわった構築美を見せている。90年代ハウス、アンビエント、ブレイクビーツ、UKガラージのエッセンスを取り入れ、繊細なピアノフレーズとタフなリズムの対比が印象的だ。
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ジャンルと音楽性
『Pianissimo』は一言で言えば「情緒と躍動のバランスを探る電子音楽」。X-Coastが得意とするレトロフューチャーなレイヴ感は保ちつつも、ピアノやストリングスをフィーチャーしたエモーショナルな構成が目立つ。特にハウスとブレイクビーツのミックス感覚は秀逸で、耳馴染みのよいメロディと、ローファイな質感がクラシック感を漂わせる。ジャンルで括るなら、Lo-Fiハウス、アンビエント・ブレイクス、ピアノ・ハウスなどが交差するハイブリッドなアルバムだ。
おすすめのトラック
- 「Pianissimo」
タイトル・トラックである本曲は、静謐なピアノの旋律とブレイクビートのコンビネーションが絶妙。リスニングにも、クラブプレイにも耐えうる強度を持つ、今作の象徴的ナンバー。 - 「The Ultimate (Extended)」
90年代レイヴとジャングルへのオマージュを詰め込んだ、ダンスフロア直行型のハード・エナジーチューン。砕けるブレイクビーツと、レトロなシンセリフが交錯し、どこまでも高揚感を持続させる拡張バージョン。X-Coastの“懐かしくて新しい”美学が炸裂する一曲。 - 「House It Up (Extended)」
クラシック・ハウスへのリスペクトと現代的なセンスが融合した、熱量たっぷりのフロアバンガー。跳ねるようなピアノリフと骨太なキック、じわじわと高まるブレイクで、聴く者をピークタイムへと誘う。エクステンデッド仕様でじっくり楽しめる、まさにDJ向けの即戦力トラック。 - 「Party Time (Extended)」
90年代レイヴとUKガラージのエッセンスをミックスした、陽気でハイエナジーなクラブトラック。跳ねるビートとキャッチーなボイスサンプルが、タイトル通りの「パーティー感」を炸裂させる。長尺バージョンならではの展開も心地よく、フロアを一気に盛り上げる1曲。
アルバム総評
X-Coastの『Pianissimo』は、ただの“ピアノを使ったクラブトラック集”ではない。そこにはエモーション、時間、空間、そしてリスナーの想像力をかき立てるストーリーテリングがある。彼がこれまで築いてきたレイヴ・アーティストとしての資質を保ちつつ、よりリスニング・フレンドリーでありながらもクラブでも機能する絶妙なバランスを実現している。音楽的成熟を感じさせる、2020年代ポスト・レイヴ世代のマスターピースと言えるだろう。