ドラムンベースの進化の軌跡をたどる上で、Goldieとの共作で知られるNasty Habits(=Doc Scott)の名を外すことはできない。本作『1994 / 2001』は、まさにその名義のもとで発表された過去音源と未発表トラックを収録したコンピレーションであり、ジャングル黎明期からダークステップが形成される過渡期を鮮やかに映し出すアーカイブ的作品である。音の厚み、低音の深さ、空間の広がり——そのすべてが90年代のUKアンダーグラウンドの熱を伝える。
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ジャンルと音楽性
ジャンルとしては、ドラムンベース、ジャングル、テクノをベースに、Nasty Habits特有の硬質なビートとミニマルかつ緊張感あるアトモスフィアが特徴だ。とくにこのアルバムは、1994年のジャングルの混沌とした美しさと、2001年頃にかけて進化した洗練されたサウンドデザインの両面を併せ持つ。疾走感と静寂が交錯し、ベースラインの重厚感とビートのシャープさが、リスナーの精神を揺さぶる。
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おすすめのトラック
- 「Shadow Boxing」
おそらく最も有名なNasty Habitsのトラックのひとつ。うねるようなベースラインと極限まで削ぎ落とされた音数が、逆にトラックの緊張感を高めている。DJにとってはミックスの“武器”であり、リスナーにはトリップを与える名作。 - 「Prototyped」
未来的かつインダストリアルなテクスチャが特徴的なトラック。ビートは抑制されながらも確実に前進し、鋭利なシンセが空間を切り裂く。2001年という時代性を反映した音響アートとも言える。 - 「Liquid Fingers」
幻想的なパッドとリズミカルなビートが絡むミッドテンポのナンバー。タイトル通り、滑らかでしなやかな指のように音が空間を泳ぎ、深夜のリスニングに最適。 - 「Deep Beats」
闇夜の都市を思わせるような、ヘヴィでざらついたベースとミニマルにして不穏なビートワークが、圧倒的な緊張感を生むドラムンベース・トラック。Doc Scottの変名プロジェクトらしく、派手な展開は避けつつも、一音一音に鋭いエッジが宿っている。
アルバム総評
『1994 / 2001』は単なるアーカイブではない。ドラムンベースが“クラブツール”から“芸術”へと変貌を遂げる過程を、Nasty Habitsがどのように捉えていたかを体感できるドキュメントだ。アンダーグラウンドの闇と静寂、美学と狂気が同居したその音世界は、現代のベースミュージックにも確実に通じる。とくに音の構造や間にこだわるリスナー、DJにとっては、何度でも聴き返す価値がある一枚だ。